本研究ではモノリス型多孔体を初めとするマイクロ構造を有する無機半導体積層体を作製し、太陽電池等への応用を試みる。前年度までにインジウムドープ酸化スズ(ITO)からなるマクロ多孔体であるモノリスをポリマーモノリスを鋳型として作製した。このモノリスは厚み8μmでシート抵抗値が120Ω/□であり、平板ITO電極に比べて約100倍の表面積を有していた。このITOモノリスを電極として利用することで、上記モノリス上に酸化亜鉛(ZnO)を電気化学的に担持することに成功した。しかし、酸化亜鉛の結晶粒が大きく酸化亜鉛層にピンホールが発生する点が問題となった。 そこで、本年度は上記とは別のアプローチから半導体積層膜のマイクロ構造化を試みた。具体的にはレーザー照射による半導体層の局所的な溶融現象を用いたマイクロ構造形成(レーザー描画)を行った。ここではITO電極上に感光層としてポリピロールを電気化学的に堆積させ、続いてZnOを電解析出により製膜した。この積層膜上に405nmのGaN系ブルーレーザーを集光・照射すると、照射部のZnOが溶融・飛散することで300-500nm程度のZnOの膜厚の減少、すなわちZnO表面の凹凸構造が観察された。さらに、このレーザーを走査することで線幅1-2μm程度のマイクロパターンを形成することに成功した。レーザー照射部の酸化亜鉛の結晶性が非照射部に比べて高くなっていることや、ZnO結晶中の酸素欠損が増加していること、さらにそれに伴い電気伝導度が向上していることが確認された。
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