研究実績の概要 |
本研究課題では2元合金単結晶基板を固体高分子形燃料電池正極材料のモデル触媒とし、金属間化合物の形成が電極触媒特性に与える影響を調査することを目的としている。本年度はPt3Co(111)合金単結晶について熱処理条件の違いが構造と電極触媒特性に与える影響を調査した。 まず先行研究により超格子構造を形成すると報告されている条件(1200℃・1min熱処理後、700℃・15hr保持)で試料熱処理を施し、構造評価を行った。しかしながら、超高真空中での低速電子線回折、大気中でのX線構造解析のどちらの結果からも超格子構造に起因する回折パタンは現れなかった。熱処理後の合金単結晶表面のEBSD像を観察したところ、表面のかなりの部分に他の結晶面((110), (100)など)が現れていることが分かり、上記測定手法で超格子構造が確認されなかった理由が、用意した単結晶試料そのものの(111)面への表面配向性が極めて低いことによることがわかった。 構造評価により超格子構造が確認されなかったが、超格子構造を形成し得る熱処理を施したPt3Co(111)試料の触媒特性を評価したところ、清浄Pt(111)試料に対し約10倍のORR活性を発現し、初期活性、耐久性ともに通常の熱処理条件(1200℃, 1min熱処理後、1℃/1秒で降温)を施したPt3Co(111)試料に対して高かった。したがって、以上の結果は超格子構造の形成が電極触媒の高機能化に有効であることを示唆している。
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