研究実績の概要 |
本年度はコアシェル触媒のコア合金としてIr系金属間化合物を想定し、Ir-Ni表面合金のコア金属としての有用性の評価を予定していた。しかしながら、前段階として比較のために準備していたIr(111)基板上に分子線エピタキシー法でPtを堆積したモデル触媒表面系でこれまでの報告に対し、遥かに高い酸素還元反応への触媒特性を得られることが判明したため、本年度はPt/Ir(111)モデル触媒の作成、構造評価および触媒特性評価を行った。以下に詳細を述べる。 Ir(111)基板上に形成したPt単原子層は1~4原子層のいずれの膜厚においてもエピタキシャル成長していることが表面電子線回折および走査トンネル顕微鏡の結果から確認された。これらの表面は極めて高い酸素還元活性を示し、既報の電気化学手法により作成したPt/Ir(111)単結晶触媒よりも遥かに高い値であった。更に、Pt層厚が4原子層のときにPd, Auなどをコア金属とした場合に対し、高い触媒活性・耐久性を示し、Pt/Irコアシェル構造がコアシェル触媒として有望であることが明らかになった。 本研究ではIr系のコアが従来の報告に対しPtシェルの特性を上昇させることが見いだせ、これはコアであるIrが表面層のPtに対し適度な圧縮歪みを与えることに起因するよ予想され、酸素還元反応用コアシェル触媒の新たな材料設計指針となる。今後、本研究課題で得られた結果を基に、Ir合金系およびこれまで評価されていなかった材料系に対しコア材料の候補を広げ、検討していく予定である。
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