平成29年度は強磁性のα-Feの析出頻度を増加させるため、Cuを微量添加し(Fe76Si9B10P5)99.75Cu0.25、(Fe76Si9B10P5)99.5Cu0.5単分散粒子を作製し、内部組織と磁気特性評価を行った。その結果、Cuを0.25 at%添加した粒子は内部に完全なアモルファス構造を形成していたが、Cuを0.5 at%添加した粒子はガラス形成能の低下により、As-Qの状態で一部結晶化が生じていることが明らかとなった。TEMの観察結果より、Cuを添加した粒子は熱処理を行うとどちらも結晶粒径が50 nm以上の粗大な化合物相の析出量が減少しており、数密度の測定結果からもナノ結晶相の析出頻度が増加していることが確認された。しかし、Cuを添加した粒子は10 nm程度の微細な結晶相の析出量も減少しているために合金全体の平均結晶粒径はFe76Si9B10P5単分散粒子とほぼ同じ値を示した。したがって、本研究においてはCuの添加による組織の微細化の効果は得られなかったが、結晶粒径の粒度分布を狭くし、結晶相の数密度を上昇させる効果が確認された。また、磁気特性評価結果より、Cuを添加した粒子は常磁性のFe-B系化合物相の析出量が減少しているために合金の磁気特性は向上し、Cuを0.25 at%添加した粒子の最大の飽和磁束密度は最大で1.69 Tを示した。しかし、Cuを0.5 at%添加した粒子はAs-Qの状態ですでに一部結晶化が進行していたために、熱処理過程で化合物相の析出が進行し、熱処理による飽和磁束密度の上り幅は小さくなる結果となった。したがって、本研究においては(Fe76Si9B10P5)99.75Cu0.25単分散粒子が最も優れた磁気特性を示すことが明らかとなった。
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