研究課題/領域番号 |
15K18245
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
篠永 東吾 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (60748507)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザ / 周期的微細構造 / 生体材料 / チタン / 骨芽細胞 / 細胞伸展 |
研究実績の概要 |
チタン(Ti)やTi合金は生体材料として広く用いられているが、生体適合性の向上が望まれている。生体適合性の向上には周期的微細構造形成による細胞伸展制御が有効な手法の一つである。本課題においては、フェムト秒レーザを用いた周期的微細構造形成によりTiやTi合金上への細胞伸展制御を試みる。その際、形成する周期的微細構造の周期をレーザ照射条件によって制御し、細胞伸展に有効な周期について実験的に検討する。 本年度は、光学基本機器を用いて周期的微細構造形成のためのレーザ照射セットアップの構築を試みた。レーザ発振機から出射されたフェムト秒レーザ光をミラーで導き、レンズを用いてTi基板表面に集光できるようにした。また、XYステージを用いることで集光スポットを掃引させながら照射可能にし、任意の面積に対して周期的微細構造形成領域を作成できるようにした。 純Ti表面に対して基本波、第二高調波、第三高調波の3つのレーザ波長を用いてスポット掃引照射を行った結果、レーザの偏光に対して垂直な方向に溝を有する周期的微細構造がそれぞれ形成された。得られる周期はレーザ波長の約80%であることが明らかになった。すなわち、レーザ波長により周期を変化させることが可能であることが示された。 フェムト秒レーザの基本波を用い、周期約600 nmを有する周期的微細構造形成領域を作成した純Ti基板に対して細胞試験を行った。細胞試験では骨芽細胞を用い、培養後の細胞は免疫染色を行うことで細胞伸展の様子を蛍光顕微鏡にて観察できるようにした。レーザを照射していないTi基板表面では細胞がランダムに伸展していた。一方、周期的微細構造形成後のTi基板表面において、細胞が溝に沿って伸展することが明らかになった。本結果より、周期約600 nmの周期的微細構造は細胞伸展制御に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の実施計画に挙げていた、周期的微細構造形成のためのフェムト秒レーザ照射セットアップの構築を進めることができた。最初に基礎実験としてレーザの波長を変化させてTi基板上への周期的微細構造形成を試みたところ、各レーザ波長において周期的微細構造が形成された。この際、レーザ波長により周期的微細構造の周期が変化することが明らかになった。骨芽細胞を用いた細胞試験により、周期約600 nmの周期的微細構造上において、細胞が溝に沿って伸展することがわかった。すなわち、周期約600 nmの周期的微細構造は細胞伸展制御に有効であることが示唆された。 また、周期の制御だけではなく、深さ等を含めた形状制御も細胞伸展制御を行う上では非常に重要であると考えられる。本研究を発展させるため、現在、レーザ照射パラメーターの変化による周期的微細構造の形状制御を実験的に試みている。以上の結果より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、Ti基板上に対してレーザ波長等により周期を変化させた周期的微細構造形成領域の作成を試みる。また、現在の研究を発展させ、周期的微細構造の周期制御だけではなくレーザ照射パラメーターによる形状制御について実験的に検討する。 次に、周期が細胞伸展に与える影響について検討する。この際、細胞試験は27年度と同様に短時間培養で行う。細胞伸展に有効な周期を定量的に調査するため、細胞が伸展する角度と細胞数の関係を評価する。次に、細胞の培養時間を変化させ、細胞伸展の過程について観察を試みる。溝に沿って伸展する細胞とランダムに伸展する細胞を観察することで、細胞伸展制御メカニズムについて検討を行う。
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