本研究は、純チタンおよびチタン合金に対して粉末強加工プロセスを適用し、高強度と高延性を同時に満足するための最適組織制御法ならびにその変形挙動を明らかにすることを目的としている。金属材料に求められる諸特性の中で最も基本的かつ重要である、高強度と高延性を同時に満足できる手段として、粉末強加工プロセスによる「調和組織制御材料」が注目されている。これまでの調和組織材料研究では粉末粒子径150ミクロン以上の粗大粉末粒子を使った検討がほとんどであるが、実用化のためには50ミクロンよりも小さな微小粉末粒子を用いる必要がある。しかし、従来の粉末強加工プロセスを微小粉末粒子に適用した場合、粉末凝集や不純物混入の可能性があり、新たなプロセスの開発が必要である。 昨年度は、純チタン微小粉末を使用して、高圧ガスジェットミリング法による調和組織制御のプロセスを確立した。 本年度は、昨年度に確立した高圧ガスジェットミリング法のTi-15V-3Cr-3Sn-3Al合金へ展開に取り組んだ。Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al合金は、代表的なβ型合金であり、超弾性などの優れた機械的特性を有することから、めがねフレームなどの機能材料として実用化されている材料である。 Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al合金に、高圧ガスジェットミリング法による調和組織制御を施すことにより、十分な延性を保ちながら高強度化することに成功した。一方、α相の局所析出が確認された。α相の析出を最適化することにより、さらなる高強度高延性化の可能性が示唆された。
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