研究課題/領域番号 |
15K18250
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
夏井 俊悟 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70706879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 溶融塩電解 / 気液流動場 / 混相流 / 共還元 |
研究実績の概要 |
鉄鋼業などから排出される高温CO2の大気放散を低減させる技術として、CO2を電気化学的に他の物質に転換する方法がある。申請者は、還元反応が高速で、比較的低温で溶融するLiCl-KCl溶融塩を用いたCO2分解に成功しており、本法では、自然エネルギー由来の電力で十分還元できる。しかし、低温では結合力の強いCO2の化学反応速度は著しく遅くなることが課題であり、還元剤の液体Liは、反応後に自身が固体酸化物として析出し、熱還元反応を阻害する問題も同時に顕在化する。そこで本研究では、気液対流場を最適化し、電解析出したLiをエマルジョン化することで反応界面積を著しく増大する着想に至った。CO2気泡ウエイクを用いた気液対流場による液体Liとの接触界面積増大をねらいとし、還元速度向上を試みたが、大きな向上はみられず、気泡運動量の界面積向上への寄与は限られることがわかった。これについて、分散相に適用可能な数値流体力学シミュレーションであるSPH法を用いた力学解析により、溶融塩中の金属液滴の分散特性は、液相間界面エネルギー、密度比によって比較的簡便に記述できるが、気泡通過時の界面曲率に対して鋭敏な感度をもつことを明らかにした。また、融体界面の直接観察により気-液-液界面にはミクロンオーダーの薄い金属液膜が生じることが分散の一因となることが明らかとなった。以上の得られた知見より、気泡流に加え補助的な遠心力による攪拌効果を付加した懸濁流動場中での電気化学測定を実施したところ、電流特性が流速に対して鋭敏な感度を持つことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本補助金の申請と並行しながら行った独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構JOGMECとの共同研究で得た知見を有効に活用し、流動場のその場観察ならびに数値解析を実施できた。計画していた実施内容が実行できたものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、申請書に記載した予定のとおり対流場中に添加した酸化物粒子の電解を行っている。TiO2あるいはWO3をモデル系として流動化・電解を行ったところ、カソード付着物と溶融塩中の沈殿物に分離され、XRD測定によりカソード付着物の方がより優先的に還元が進行していることを明らかにした。電流特性は酸化物粒子の体積分率に依存し、流動場や酸化物添加量によって反応を制御できると考えられる。この電解法の興味深い点は、電極に衝突した酸化物粒子が優先的に還元、付着し、気液との三相界面を形成することである。電極に付着した流動粒子が還元され、導電性の増加によりカソード界面積増大に寄与する可能性がある。今後は、電極周囲の流れ場と電流特性の関係について詳細に検討し、導入気泡の影響について調査する。
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