研究課題/領域番号 |
15K18252
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
田崎 良佑 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70644467)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鋳造 / プレス / 鋳型設計 / 最適化 / 速度制御 / システムインテグレーション |
研究実績の概要 |
本研究の主なシステム制御技術は、自動的な鋳型設計と、層流充填の流動挙動予測制御である。鋳型設計の最適化計算アルゴリズムは、三次元流路の形状特徴抽出、ポロシティ量―形状特徴量の関係解析、乱流要因組合せ最適化の数値計算法を統合化して構築している。 キャビティを内包する上鋳型を樹脂材料で製作し、プレス充填テストを実施した。これにより、複雑形状対応の砂型プレスキャスティングの実現性が確認され,さらに乱流に起因する巻込み気泡:ポロシティ量の低減を考慮した鋳型設計の最適化法を提案した。具体的には、乱流現象が招くポロシティ発生箇所を特定し、流路を特徴づける断面積変化・合流箇所・落下流れ・流動中心の遷移に対するポロシティ発生の相関解析を行っている。つぎに、形状特徴量から成る乱流要因評価式を導出した。候補姿勢を与えたキャビティについてスライスした断面形状から予測される流脈線の情報をもとに、乱流要因評価式を計算して組合せ総和が最小化する姿勢を探索できる。これにより、乱流の発生しにくい鋳型を自動的に設計可能となっている。 乱流を起こさない層流充填を高速で実現し、同時に金属に付加する充填圧力を制御することで安定した品質を得るプレス制御システムを構築する。鋳型の三次元形状データと金属体積情報から充填圧力を推定する数理モデルの逆システムに加えて、溶湯反力情報に準ずる金属流動のオンライン状態推定法を導出している。鋳造環境変化の金属温度低下を考慮して、温度依存性粘性モデルを導入して充填圧力モデルと統合し、実観測圧力の情報フィードバックによる層流充填挙動推定とオンライン型予測制御システムを構成している。これにより、仮に相変態温度付近の半溶融金属に対しても圧力制御(差込み欠陥抑制)と流動制御(乱流抑制)が機能し、低エネルギプロセスの高度な品質補償を達成できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者がこれまで取り組んできた、制御工学を基礎とする動的モデリング・システムの最適化とインテグレーション法を応用し、また鋳造材料・金属流動に関わる研究協力者および企業技術者の支援のもとで技術向上を図ることで,計画のとおり順調に実施できている.
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今後の研究の推進方策 |
アルミ・鋳鉄鋳物の重力鋳造法、アルミダイカスト鋳造、その他の素形材プロセスへの技術応用評価を行う。提案する鋳型設計アルゴリズムで導出される最適キャビティ姿勢を内包する鋳型を造形して溶融金属を充填することで、従来設計に対する優位性を確認する。一方でダイカスト鋳造では、従来の射出シリンダ・製品キャビティを用いて、提案制御システムで導出される層流充填制御動作パターンと従来射出動作パターンとを比較し、乱流発生量の差異による品質変化を観察することで提案制御法の有用性を評価する。これにより提案主要技術の各々が産業的有用性と波及効果が見込めることを実証する。 低融点金属と半溶融鋳鉄を用いて、鋳型内部流動の直接観察を行い、提案する鋳造プロセスの適用性を検討・評価する。半溶融状態の金属流動に対する数理モデリングの妥当性検討、モデルの高精度化、予期しない乱流要因による欠陥の対策手法の検証を行う。これらの可視化実験は、主としてプレスプロセス内の提案物理モデルと統合制御システムの検証と改善のために実施する。
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