次世代電池負極材料として注目される多価金属を安全に電析できる技術として、揮発性が低くかつ室温において電気化学的活性種を含む電解液を開発した。初年度はマグネシウム電析のための電解液として、マグネシウムアミド塩ーイオン液体ーグライムのモル比1:7:8混合電解液を作製した。このモル比は、適度な流動性と導電率を維持しつつ、マグネシウムカチオン及びイオン液体カチオンが全てグライムによって配位されることで、未配位のフリーグライムをなくし揮発性と酸化耐性をさらに向上させるために考案した。この「グライム配位型電解液」から、室温での金属マグネシウム電析に成功した。また、この電解液中でマグネシウムイオンがグライムに配位された錯カチオンであることを解明した。グライムのない系では、マグネシウムイオンは錯アニオンであり、室温での電気化学的活性が極めて低い。よって、配位構造の適切な変換により電気化学的活性を改善できると結論した。 また初年度は、アルミニウム塩(AlCl3)ーグライムの2元系について電気化学的活性種の有無を調査した。その結果、60°C以下では、グライムの種類によって電気化学的活性種が異なることを明らかにした。ラマン分光測定の結果、いずれの電解液でも同様のアルミニウムーグライム錯カチオンの存在が示唆された。よって、電気化学的活性はグライムの酸素数やアルキル側鎖に大きく影響を受けると結論した。これは、リチウムやマグネシウムでは見られない現象である。 最終年度は、アルミニウム系グライム配位型電解液の作製に一定の成功を見た。このほか、当初の予想を上回る成果として、すべての溶媒を配位させるというコンセプトに基づき、クラウンエーテルと超酸化カリウムからなる「超酸化物イオン液体状態」、及びクラウンエーテルを配位したヒドロニウムイオンを構成カチオンとする「ヒドロニウム溶媒和イオン液体」の発見に至った。
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