平成28年度は、平成27年度中に作製した、CO2反応性イオン液体を含有し、poly(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid) (PAMPS)とpolydimethylacrylamide (PDMAAm)から成る相互侵入網目をゲルネットワークとする高強度イオンゲル膜について、当初計画通り、ガス透過性能評価と透過機構に関する検討を行った。イオン液体へのCO2吸収等温線を作成するとともに、CO2吸収前後のイオン液体粘度を測定し、種々条件下でのゲル内CO2吸収量とCO2錯体拡散係数の推算式およびそれらを組み込んだCO2透過モデルを提案、ゲル膜のCO2透過係数推算を可能とした。 一方、CO2反応性イオン液体含有耐圧性イオンゲル膜の薄膜成型を可能とするために、開放系でのキャスト法によるゲル膜作製が可能なゲルネットワークとして、不揮発性のイオン液体性モノマーである[3-(methacryloylamino)propyl]trimethylammonium chloride (MAPTAC)を用いた高強度イオンゲルを作製した。PMAPTAC/PDMAAmネットワークを有し、低粘性CO2反応性イオン液体([P2221O1][Inda])を80wt%含有するイオンゲル膜について、PMAPTACの架橋度がゲル強度およびCO2透過性に及ぼす影響について検討を行い、低架橋度でも引張破断応力が1MPa以上を有し、膜間差圧500kPaの条件でも破断することなく、高速(約10000barrer)、高選択的(CO2/N2選択性:100以上)なCO2透過が可能な膜厚80ミクロンのゲル膜の創製に成功した。 本研究により、高速・高選択的CO2透過が可能なCO2反応性イオン液体含有耐圧性イオンゲル膜のゲルネットワーク構造とネットワーク組成について、その設計指針を確立できた。
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