研究課題/領域番号 |
15K18260
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
牧野 貴至 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 主任研究員 (70455153)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アンモニア / イオン液体 / 分離回収技術 |
研究実績の概要 |
アンモニア製造プロセスの消費エネルギーの3割を占める分離回収工程の省エネルギー化を達成すべく、イオン液体を用いたアンモニア分離回収技術の確立に向けて、アンモニア吸収量と回収量に優れたイオン液体(室温近傍に融点を持つ液体の塩)の開発に取り組んでいる。平成27年度は、カチオンにプロトン供与性置換基を有するイオン液体に注目し、イオン液体の分子構造とアンモニア吸収量の関係を、平衡物性測定と分光分析により明らかにした。具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基で修飾された側鎖を持つアンモニウム塩およびイミダゾリウム塩を対象とした。非修飾のイオン液体と比較して、これらプロトン供与性置換基を有するイオン液体は、多量のアンモニアを吸収した。特に、カルボキシル基とスルホニル基で修飾されたイオン液体が、吸収量の点で優れていた。分光分析の結果、アンモニアとプロトン供与性置換基が強く相互作用し、アンモニアとして物理的に吸収されるだけでなく、アンモニウムとして化学的にも吸収されていることを明らかにした。カチオン骨格もアンモニア吸収量に影響するが、置換基ほどの大きな吸収量差は認められなかった。同様に、アニオンがアンモニア吸収量に及ぼす影響についても調べた。物理吸収されたアンモニアは主にアニオンと相互作用していること、アニオン種がアンモニアの化学吸収量および回収量に強く影響することを見出した。以上の成果に基づけば、イオン液体のカチオンとアニオンを適切に選択し、個々のアンモニア分離回収プロセスに応じて、イオン液体のアンモニア吸収特性を最適化できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、アンモニウム塩に焦点を絞って研究を進める計画であったが、研究が順調に進展したので、イミダゾリウム塩についても測定し、カチオン骨格の影響を調査することができた。さらに、これらの研究成果をまとめ、特許として出願できた。以上より、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、金属ハロゲン化物をアニオンとするイオン液体に注目し、アンモニア吸収量の測定および分光分析を行う。プロトン供与性置換基が酸塩基反応を利用するのに対して、金属ハロゲン化物は錯体形成反応を利用するため、アンモニア吸収特性に大きな違いが出ることが期待される。また、特許出願が完了したので、研究成果の学会発表および学術誌への投稿を行う。さらに、平成28年度から29年度にかけて、カチオン骨格およびプロトン供与性置換基を固定し、アニオン種がアンモニア吸収量・回収量に及ぼす影響をさらに詳しく調べる。当初予定にはなかった事項であるが、予想以上にアニオンの影響が大きかったため、アンモニア吸収液としての更なる高性能化を達成できる可能性がある。以上の研究結果を踏まえ、平成29年度には、アンモニア吸収液としてのイオン液体の設計指針を体系化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に計画していなかったイミダゾリウム系イオン液体の結果も含めて特許出願(2016年3月1日出願)したため、当初予定していた国際会議での発表を見送った。そのため、外国旅費として約40万円(旅費)、学会参加登録費として約9万円(その他)の差額が発生した。物品費における約25万円の差額は、申請時の見積もりと比較して、試薬類および消耗品類を安価に購入できたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、研究成果を積極的に発表すべく、3件(当初予定1件、追加2件)の国際会議に参加する。追加2件のための外国旅費および学会参加登録費として使用したい。
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