研究課題/領域番号 |
15K18263
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
福田 貴史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 研究員 (50734969)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロリアクター / プレート型反応器 / 低圧力損失 / メタン改質 / 触媒反応 / 炭素析出 / 反応器設計 |
研究実績の概要 |
昨年度は模擬バイオガス(メタンと二酸化炭素の混合ガス)によるメタンドライ改質を対象に、提案したプレート型反応器の流路内の空間率と反応空間のサイズを適切に設定することで、メタン反応率を維持したまま、課題のひとつである炭素析出由来の圧力損失の増加を抑制することができた。本年度は、この結果について流体力学的観点からさらに考察を進め、摩擦損失係数を反応器固有の圧力損失のかかりやすさの指標としたところ、プレート型反応器は充填層型反応器よりも同程度以下の摩擦損失係数をとることが分かり、さらに炭素析出が進行するにつれてその傾向が顕著になることも分かった。 また、本年度はC1化学への応用を念頭に、バイオガスから効果的に発電用水素を取り出せる反応条件を熱収支計算により探索し、定まった反応条件において反応律速域の性能が得られるプレート型反応器の改良を試みた。反応条件は、燃料電池から得られる発電エネルギーが局所最大値をとる条件として、650℃、水蒸気/メタン比2を採用した。この条件のもと実施した実験において、例えば、触媒層深さ約500 μm、プレート間距離1.43 mmとすることでW/F = 24 kg s mol-1のときにメタン転化率79 %と、反応律速域の充填層型反応器と同等のメタン転化率を得ることができ、反応器の改良ができたといえる。 そのほか、プレート型反応器の設計においては、反応速度、流速、反応流体の拡散速度のバランスが重要であると考えられ、それらを無次元化し閾値を使った制約条件とすることで、プレート型反応器の設計指針として提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C1化学への応用を念頭においた反応条件を定め、実験を通して微小空間(マイクロ流路)を取り入れた提案プレート型反応器を、既存の充填層型反応器に劣らない反応器性能まで改良できたため。また、種々の反応条件をもとに反応器の設計指針を提示できたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでマイクロ流路を有する反応器として本研究で取り組んできたプレート型反応器の長所を利用した検討を目指す。依然、水蒸気を添加した模擬バイオガスのメタン改質においても、炭素析出の抑制或いは回避という課題が残ることが分かったため、この本質的な解決に向けて次年度は提案反応器を用いることによる効果を確認する。 一方、多相流系の反応については、炭素循環に関連付けられる原料と有価物を調査しつつ選定を進めており、選定した反応系においてマイクロ流路の利用が有利となる指針の提示を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
気相反応系において提案プレート型反応器が反応律速域の性能を得るのに好適な反応流体-触媒間の拡散距離が概ね1 mm以下と、本研究を通して明らかになり、それに伴って検討に必要な反応器用部品が当初計画よりも削減され購入不要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
多相流系の反応を実施するための装置部品、その他センサー、高圧ガスボンベなどの消耗品購入費に充てる。
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