研究課題/領域番号 |
15K18265
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 学 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10707152)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱プラズマ / 交流アーク / ナノ粒子合成 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究では特異的な時間変動特性,空間分布特性を有する新規な熱プラズマ発生手法である「多相交流アーク」の基礎現象と解明し,非白金系触媒ナノ粒子の製造プロセスを構築することを目的とした. 本年度は,特に多相交流アークの特異反応場の構築を目的として研究を進めた.高温反応場であるアーク中の変動現象を明らかにするため,高速度カメラを用いた多相交流アークの温度計測を試みた.従来,多相交流アークのようなミリ秒オーダーでの時間変動を有し,空間的に非対称な温度場の計測は困難であった.本研究では,特定の波長のみを透過するバンドパスフィルターを用いることで,多相交流アークの温度場を明らかにした.結果,電極近傍では13000 K程度,中心部では7000 K程度であることが見出された.さらに,電極の配置を制御することで,温度変動の特性時定数を数から数十ミリ秒の範囲で制御できることが見出された.これにより,ナノ材料生成プロセスにおいて,多量の粉体処理が可能であり,効率的なナノ粒子製造が見込まれた. 次に,ナノ粒子の原料となる金属粉末を多相交流アーク中に供給し,酸化金属ナノ粒子の合成実験を行った.特に今回は,原料としてCu粉末をプラズマ中に供給した.ナノ粒子合成実験中の発光分光計測の結果,プラズマガスであるAr,O,Nに加え,Cu蒸気およびCuO蒸気が観察された.それら金属および酸化物蒸気の多相交流アーク中での時間変動,空間分布特性を評価するため,高速度ビデオカメラ観察を試みた.結果,約10000 K程度の高温領域にてCu蒸気からの発光が,また5000 K以下の下流域にてCuO蒸気からの発光が確認された.これより,原料であるCu粉末が高温プラズマ中で蒸発し,その後酸化していく過程の可視化に成功したと言える.現段階では,CuO蒸気からの発光は非常に微弱なため,計測手法に改良の余地があると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多相交流アークの基礎現象であるアーク温度場の変動特性および空間分布特性を高速度カメラで計測することで,当初予想以上に多相交流アークの特異反応場特性が明らかになった.しかし,プラズマ中の酸化物蒸気の観察の点において,当初想定よりも酸化物からの発光が微弱であったため,ナノ粒子生成機構の解明の点においてはやや遅れている.ただし,この点に関しては,次年度以降行う予定であるCu以外の金属種であるTi,Fe,においても同様の検討が可能なため,大きな問題はなく解決できる見込みである.以上の点を鑑み,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
多相交流アーク中の特定化学種からの発光の高速度観察に関して引き続き検討を進め,酸化物,窒化物,炭化物からの発光にも着目した計測を実施することで,プラズマ中での素過程を明らかにし,非白金系触媒ナノ粒子の生成機構を解明する予定である.また,ナノ粒子合成プロセスの構築には,電極消耗の低減化が重要であることが確認された.したがって,上記の検討と並行して,電極消耗の低減化に向けた電極構造の最適化を実施する予定である.
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