本研究では,特異的な時間変動特性,空間分布特性を有する新規な熱プラズマ反応場である多相交流アークの基礎現象を解明し,非白金系触媒として期待できるTi系の酸窒化物ナノ粒子の製造プロセスを構築した.平成29年度においては,下記3つのサブテーマを実施した.温度場の高次制御,電極消耗の大幅低減化を達成したことで,酸窒化物ナノ粒子の大量製造に多相交流アークが適していることを見出した. サブテーマ1)多相交流アークの温度場の可視化・・・高速度カメラを用いた温度場可視化システムを構築し,多相交流アークが有する複雑な温度場の時間変動特性を解析した.周波数変調が及ぼす多相交流アーク温度場への影響を明らかにした.周波数を変調により,多相交流アーク温度場の変動周波数を制御することで,ナノ粒子生成プロセスに影響を及ぼさない変動範囲を見出した. サブテーマ2)多相交流アーク中の酸窒化物ナノ粒子の生成機構の解明・・・多相交流アークにナノ粒子原料であるAl,Ti原料を投入し,それらの金属蒸気および酸化物蒸気のプラズマ中での挙動を解明した.Ti系酸窒化物ナノ粒子の生成には,気相に存在するTiO分子の挙動が重要であることがわかった. サブテーマ3)電極消耗機構の解明および抜本的解決・・・W金属電極の消耗は液滴飛散と金属蒸発により生じることが明らかとなった.その結果を基に,ダイオード整流による二極分割交流電極を開発し,電極消耗の大幅低減化に成功した.
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