研究課題/領域番号 |
15K18270
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桑原 泰隆 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40635330)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CO2還元 / Irホスフィン錯体 / チタン酸ナノチューブ / アミノポリマー / ギ酸 / ハイブリッド触媒 |
研究実績の概要 |
近年、地球温暖化に対する懸念から二酸化炭素(CO2)の有効利用が注目を集めている。また、自動車やポータブルデバイス用の燃料電池の普及とともに、より安全な水素利用のため水素貯蔵物質が注目されている。CO2の水素化により得られるギ酸は比較的高い水素含有率(4.4 wt%)をもつ化学物質であり、常温で安定な液体であることから水素貯蔵材料として有望視されている。 本研究では、CO2から効率的にギ酸を合成するための固体触媒の創製を目的とし、CO2吸着能を持つアミノポリマーとCO2水素化能を持つIrホスフィン錯体、および担体としてのチタン酸ナノチューブを複合化した機能集積型触媒の設計・合成を行った。 まず、アミノポリマーとIrホスフィン錯体を複合化することで、Irイミノホスフィン錯体を合成し、これがCO2からのギ酸生成反応に活性を示すことを見い出した。これをチタン酸ナノチューブ細孔内に固定化することにより触媒活性と再利用性が著しく向上することを見い出した。アミノポリマーとIr錯体の配合比や反応条件の最適化により140℃、2.0 MPaの条件下においてTON 200以上で定量的にCO2をギ酸へと変換することができた。また、チタン酸ナノチューブ担体表面の酸塩基特性によって触媒活性は大きく変化し、触媒活性とCO2吸着量の間には相関関係があることを見い出した。 さらに、X線や放射光を利用した測定により触媒活性種の局所構造・電子状態を分析するとともに、反応中における構造の変化を追跡し、CO2からのギ酸生成メカニズムの解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度当初の目標であった、1)機能集積型触媒の合成、2)CO2からのギ酸合成反応への適用、3)化学組成や配合比・担体の最適化による反応活性の向上を実施することができた。また、当初平成28年度に実施予定であったX線や放射光を利用した測定による触媒活性種の局所構造・電子状態の解析についても踏み込んで実施することができたことから、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究実施計画に沿い、その場赤外分光分析によるCO2吸脱着過程の分析や反応過程のその場観察を実施する。また、CO2還元に最適な金属錯体・有機配位子の探索を行い、より温和な条件で効率的にCO2をギ酸へと変換可能な触媒の構築を試みる。 平成27年度に得られた結果より、アミノポリマーと金属錯体をチタン酸ナノチューブ細孔内に固定化することで高い触媒活性と再利用性を実現できるものの、使用中の活性種の溶出による活性低下が課題として浮き彫りとなった。触媒活性種を中空構造体の閉鎖空間内部に閉じ込めることができれば、活性種の溶出を防ぎ、高い再利用性・耐久性を実現することができると考えられるため、アミノポリマーと金属錯体を内包した中空構造触媒の合成と応用を検討する。
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