研究課題/領域番号 |
15K18276
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 拓也 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40727161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸菌 / 代謝チャネリング / Sortase A |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大腸菌を利用した有用物質生産を効率化するための新たなツールとして、酵素ステープラーを用いた代謝チャネリング技術を開発することである。当該年度においては、酵素ステープラーとして、Sortase Aの大腸菌体内での発現およびそれを用いたタンパク質の細胞内連結、さらにはモデル代謝経路へ適用することによる大腸菌代謝への影響を調査した。恒常発現プロモーターを用いて、Sortase Aの認識配列を挿入したCFPおよびYFPを発現させた。Sortase Aは誘導発現プロモーターを用いて発現した。IPTGを添加することによって、Sortase Aの発現を誘導し、大腸菌体内でCFP・YFPを連結した。ウエスタンブロッティングによる確認の結果、Sortase AによってCFP・YFPが連結していることを確認した。同様に、ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)およびリン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA)にSortase Aの認識配列をそれぞれ挿入し、大腸菌体内での代謝酵素の連結についても検討を行った。アセチルCoAを代謝分岐点として、酢酸生産へのフラックスが増加させることを目的とした。その際、他の代謝経路からの酢酸生産を抑制するために、ピルビン酸酸化酵素をコードする遺伝子を破壊した。また、元株のPFLおよびPTAも欠損させ、これらの遺伝子はSortase Aの認識配列を持つg-PFL、PTA-lpとして、プラスミドで補完した。Sortase A発現プラスミドを形質転換し、菌体を培養することにより、代謝への影響を調査した。現在、HPLCで有機酸などの代謝物を測定することで、Sortase Aの発現誘導時期・培地組成などを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、Sortase Aを用いた代謝チャネリング技術の確立とその応用である。平成27年度においては、Sortase Aによる代謝酵素の大腸菌体内での連結技術の確立を行った。モデル系として連結対象として蛍光タンパク質を用い、Sortase Aを誘導型プロモーターで発現することで、IPTGの添加とともに大腸菌体内でタンパク質が連結される系の確立に成功した。当初の計画通り、本技術を代謝酵素に適用し、その評価を行っているところである。以上より、全体として概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、アセチルCoAを代謝分岐点とした酢酸生産へのフラックスの変化について調査を行う。Sortase Aの発現誘導時期や培地組成による代謝への影響を調べることで、本技術の評価を行う。また、PFLにアルコール酸化酵素(ADH)を連結することで、エタノール生産についても検討を行い、本技術の汎用性を評価する。同時に、本技術の応用例として、n-ブタノールをターゲット化合物に設定する。n-ブタノール生合成経路の導入と、代謝チャネリング技術の適用により、n-ブタノールの効率的な生産を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の既存の設備備品を用いることで、当初予定していたよりも主に物品費に関して経費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に実施する研究計画を推進するための物品費、得られた成果を学会発表するための旅費に計上する予定である。
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