羽ばたき型超小型ドローンの空力性能の向上を目標として、本研究は、羽ばたきの各瞬間で常に翼が最適形状となるように翼構造を制御するモーフィング羽ばたき翼の研究開発を行った。本研究期間では、モーフィング翼の基本特性を明らかにすること、および翼の受動的な変形(空力弾性変形)を利用したモーフィングシステムの軽量小型化を目的とし、以下の研究開発を行った。 1)ヒンジ制御を利用したモーフィング:前後2枚の翼をヒンジで接続し、そのヒンジ角を変化させることで、常に最適なキャンバを実現させるヒンジ型モーフィング羽ばたき翼を提案し、その最適なヒンジ運動制御とヒンジ位置を数値解析により明らかにした。最終年度では,ヒンジ型羽ばたき翼のスケールモデルを製作してその非定常流体力を計測し,ヒンジ型モーフィングの空力性能向上効果を実験的に証明した。 2)構造異方性を利用したモーフィング:翼の構造異方性によって変形を制御することを目的として、波板構造を用いたコルゲート翼、および強化繊維を配置した複合材料翼の2種類の異方性構造翼を提案し、それぞれの最適な翼構造を数値解析により明らかにした。最終年度では,コルゲート構造や強化繊維である翅脈を局所的に配置することで、より実際的な翼構造について研究を行った.以上の研究から,空力性能の向上と軽量化の両方を達成するためには、コルゲートと翅脈を組み合わせたハイブリッド構造が重要であることが明らかとなった。 3)構造非線形性を利用したモーフィング:膜の張力変化や座屈などの構造非線形性を利用して剛性を制御し、最適なモーフィング状態を達成する翼構造について研究を行った。実証模型を用いて推力および変形の非定常応答の計測し、その基本特性を明らかにすると共に、その現象を再現する数値解析手法を開発し、基本的な設計指針を示した。
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