計算コストの低い低次元の数学モデルを用いた数値解析データと信頼度は高いが時間・空間的に断片的な複数の軌道上情報を融合することで,これまで明瞭にできなかった軌道上での膜面展開宇宙構造物の形状・ダイナミクスを効率的かつ,詳細に推定する方法の構築を目的とした. 【課題Ⅰ】では,複数の時間・空間的に断片的な軌道上情報と数値解析の融合による形状・ダイナミクスの推定法の開発を目指し,位置・速度情報および計測頻度と計測領域の異なる実データに近い計測データと数値解析の融合手法の構築に取り組み,微小重力,真空下での実験および数値計算によりその妥当性を評価できた. 【課題Ⅱ】では,大規模な大型膜面展開宇宙構造物の軌道上運動モデルの低次元化および,その高速な並列解析コードの開発に取り組み,膜面ダイナミクスの数値計算モデルの疎性に着目した,自由度の削減,要素数の削減方法を提案し,かつ,これまでは捨てていた計算過程でのデータを積極的に取り入れることにより反復計算の高速化方法を提案し,計算コストの低減(フルモデル解析に比べ90%以上の計算コスト低減)を実現した. 【課題Ⅲ】では,【課題Ⅰ】,【課題Ⅱ】の結果を踏まえ「予測可能な膜面宇宙構造物システム」の構築を支援する設計法の検討を行い,小型モデルから大型モデルを予測するための相似則および,相似パラメータの時間・空間的緩和法の構築について取り組み,微小重力,真空下での実験により妥当性を評価した.【課題Ⅰ】の軌道上での運動の推定,【課題Ⅱ】の軌道上運動の低コスト予測,および,【課題Ⅲ】の中で実施した相似則は,対象の構造配置や,計測機器の配置,計測間隔などを上手く設定することで大幅に効果が大きくなることが確認でき,課題のⅠ,Ⅱ,Ⅲを実施することによる「予測可能な膜面宇宙構造物システム」の実現に向けた方向性を明確にできた.
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