本研究課題では、人工衛星で高指向安定度を実現する手法として、ミッションペイロード部をバス部から完全に切り離して空間安定させる制御の実現性検討が実施された。まず、空間安定制御方式として、ステーブルプラットフォーム(SP)方式とストラップダウン(SD)方式の2方式のトレードオフを実施した。SD方式は、ペイロード側にセンサが不要で完全非接触なシステムが構築可能であるが、絶縁性能はSP方式の方が優れている。そこで、両方試せるように慣性センサをベース側・ペイロード側の両方に取り付け可能なようにシステムを設計した。更に、静電容量型非接触変位センサと中実型の非接触型ボイスコイルモータ(VCM)を非同軸に配し、合計6軸のストラット型に配置した、空間安定装置の設計を実施した。 VCMのコイルとヨーク間の間隙を大きくするとペイロード側の可動変位域が広く一方、推力が低下する。VCMヨーク側が6自由度変位した際のヨーク(コイル)縁断面を評価することで、可動変位制限値を算出する手法を考案した。検討結果、間隙0.5mmの場合、並進1mm、回転0.5degとなった。以上の検討結果、直径225mm、高さ50 mm、全体1kg以下のコンパクトな実験システムを構成することができた。 計画初期に想定した中空型VCMと非接触センサを同軸に配置する方式は、VCM推力と可動域、搭載可能質量間の制約条件が厳しい課題が見えたので、実験システムとは独立に、変位センサ-中空型VCM1軸校正装置を試作し、性能評価を実施することとした。本校正装置を用いて応答特性を評価し、中空型VCMと非接触変位センサ同軸一体型の機能性能最適化を図る予定である。 研究の成果は、日本航空宇宙学会主催第60回宇宙科学技術連合講演会に発表した。構築した実験システムを用いて今後、制御特性を評価する計画で、研究成果を日本航空宇宙学会誌等の学術誌に投稿予定である。
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