研究課題/領域番号 |
15K18290
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 良太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (20724420)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 極値波浪解析 / 台風 / 不確実性 |
研究実績の概要 |
日本周辺海域を対象に海洋構造物の設計外力の算定に用いる極値波浪解析に取り組んでいる。日本近海の最大波高は主に台風によって特徴づけられるが、台風下の波浪観測データは質・量ともに限られ、極値推定の精度が低くなるという課題がある。 平成28年度は、提案した極値統計解析を不確実を含めて定量的に推定できるLikelihood-Weighted Method(以下、LWM法)の理論を構築し、Journal of Ocean Engineeringに査読論文が受理された。具体的には少ないデータからの極値推定手法をベイズ推定をベースとして構築した。特に事前分布において一様分布を用いた際に、推定結果が合理的であることを数値実験で示した。また構築された事後分布に基づきaleatoryとepistemic両方の不確実性を考慮した期待極値分布を推定する手法を構築した。他の手法との最大の違いはグループ尤度を利用する点であり、これによりデータ誤差を陽的に考慮した尤度推定を実現することができる。これによりデータ誤差が推定の不確実性にどのように影響を及ぼすかについて考察した。 少ないデータに対して近似的挙動に依存する推定手法が一般的であったが、LWM法は少ないデータに対しても合理的な極値統計解析を与えることができる。少ないデータは海洋波浪に限らず一般的に発生する課題であり、 LWM法は広く利用できると期待される。 同手法を日本周辺海域の波浪データを適用することで、極値解析の不確実性を定量的に評価することができた。一方でその課題として、工学的な利用には不確実性が大きく、推定に用いる情報量を増やさざるを得ないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では既存手法の改良による合理的で定量的な極値統計手法の構築、およびそれを用いた日本周辺海域の極値波浪解析の実施を目的としていた。目標としていた点データに対する極地推定の理論を構築は実現できた。また同手法を日本周辺海域の極値波浪マッピングへと適用した。 データ不足の限界を合理的に示す結果となり、工学的に利用に資する情報を提供するには更なる検討が必要となる。本研究では海外の研究者と共同で理論構築に取り組んだが、上記課題解決に向けて更なる検討を行う。具体的に周辺海域のデータを活用する空間統計の手法を取り入れるアイデアをいくつか提案している。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画を超えて、極値統計解析を空間統計へと拡張し、推定精度の向上を目指す。そのために平成29年度へと研究期間を延長し、いくつかの研究アイデアについて理論構築を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では当初、Dr.PhilipJonathan(ロイヤルダッチシェル社のHead of Statistics and Data Science group兼ランカスター大学の名誉フェロー)との共同研究(同計画2本目の査読論文)を目的とした英国滞在を平成28年度末に予定していたが、同氏の急な出張など業務上の都合により今年度内の訪問が困難となり、平成29年度上旬に滞在する予定となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度内に英国滞在を実施する。
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