熱交換器の省スペース・低コスト化に有利な扁平多孔管に着目し,扁平多孔管を用いた蒸発器の最適熱設計に必要となる管内蒸発熱伝達,圧力損失特性を明らかにするとともに,最適流路形状の検討および冷媒への相溶性オイル混入による伝熱・流動特性への影響について明らかにした. 2015年度には,伝熱面積の拡大と隅部での表面張力効果が期待できる流路内面にリブを有する扁平多孔管について,中小型空調機器に使用されている冷媒R32の蒸発熱伝達と圧力損失の測定を行い,それらに及ぼすリブの影響について検討した.さらに,扁平多孔管を模したアルミニウム製の複数微細流路内を流れるR32の断熱条件下および蒸発をともなう流動様相を観察し,管内蒸発熱伝達に関係する蒸発流動特性を明らかにした. 2016年度には,三角形流路および円形流路を有する2種類の扁平多孔管について蒸発熱伝達率および圧力損失の測定を行い,伝熱流動特性に及ぼす流路断面形状の影響を定量的に明らかにした.高質量速度・高クオリティ条件では流路形状の差異は小さいが,低熱流束の低・中クオリティ域では三角形流路の熱伝達率は円形流路に比べて最大で2倍程度の高い値を示すことを明らかにした.次に,R32+オイル混合物について円形流路を有する扁平多孔管内での蒸発熱伝達実験を行い,蒸発熱伝達および圧力損失に及ぼす質量速度,乾き度,熱流束およびオイル質量分率の影響について明らかにした. 2017年度には,矩形流路を有する扁平多孔管内でのR32+オイル混合物の蒸発熱伝達実験を行い,熱伝達率および圧力損失に及ぼす質量速度,乾き度,熱流束およびオイル質量分率の影響について定量的に明らかにした.さらに,R32+オイル混合物の蒸発流動様相の観察を行い,流動特性に及ぼすオイルの影響は低気相速度で顕著であり,熱流束の増大にともない激しいフォーミングが生じることを明らかにした.
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