研究課題/領域番号 |
15K18293
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀次 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (00554958)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 舶用ディーゼル機関 / 排ガス計測 / 粒子状物質 / 煤じん計測 |
研究実績の概要 |
今年度(平成28年度)は、平成29年度に構築した煤塵計測装置を使用した煤塵濃度計測と粒子状物質のPM濃度計測、粒子状物質の粒径分布計測を中心に研究を実施した。主な実験結果を以下に示す。供試機関には舶用4ストローク高速ディーゼル機関を用いた。既往の研究から舶用4ストロークディーゼル機関から排出されるPMは、発電機特性の低負荷率時にSOF分割合が高い。今年度は最初に排ガス計測時の煤塵フィルタ温度等が計測値に与える影響が大きいと考え、SOF分割合の高い発電機特性の負荷率30 %の排ガスに関して、PMと煤じんの同時計測を行った。計測の結果、排ガスサンプリング位置温度280℃時にフィルタホルダ温度を250℃とした場合、計測された煤塵濃度は、ISO8178-1に準拠したPM濃度に対して35 %程の重量濃度となった。これは、ISO8178-1によるPM捕集フィルタのISF分割合と等しく、煤塵計測手法を舶用ディーゼル機関の排ガス計測に用いた場合、SOF分に関しては殆ど捕集されていないと考えられる。また、煤塵計測のフィルタホルダ温度を250℃から150℃までの範囲で、数パターンの温度による計測を実施した。計測の結果では220℃以下の温度から煤塵濃度が上昇する傾向が確認され、150℃ではPM濃度に対して95%程の重量濃度となった。また、煤塵計測を実施する上で問題となるフィルタの吸湿量に関する実験を行い、乾燥空気雰囲気、ISO8178-1によるフィルタ静置雰囲気にて吸湿量の確認を行った。確認の結果、直径47mmの石英フィルタでは、シリカゲルを使用したドライデシケータ乾燥雰囲気で1時間で0.5-0.7mg、ISO8178-1フィルタ静置雰囲気では1時間で約1.0mgの吸湿が確認され、煤塵計測時の計測までの後処理に注意を要することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の実施事項は、計画事項に対して未実施項目がある。主な未実施項目は、舶用2ストロークディーゼル機関の排ガスを対象とした計測である。舶用4ストロークディーゼル機関の計測では、前年度報告に記載したとおり、排ガスの圧力脈動が大きく計測時に問題となった。この解決を行うため、初年度(平成27年度)から今年度(平成28年度)の最初に体側に時間を取られ、その結果、上記の未実施項目が発生した。 なお、次年度(平成29年度)は延長申請期間となっており、今年度(平成28年度)実施項目の未実施項目を中心に計画していた実験を完了する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成29年度)の実験に使用する計測装置の構築は、今年度までに完了しており、実験を実施・推進する予定である。特に、今年度は舶用2ストロークディーゼル機関を対象とした実験が中心になる。この機関は、静圧過給方式となっており排ガスの圧力脈動が、今年度に実験を実施した舶用4ストロークディーゼル機関に対して小さい事が分かっており、計測時に大きな問題が出ないことが予想される。なお、今年度未使用となった経費は消耗品(少額機器・機関の運転費用)であり、研究が進捗していることから、次年度の早期に使用する計画となっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度(平成28年度)実施予定項目に対して未実施項目があり、そのうち、機関の運転費用、計測時少額消耗品として使用予定分が、次年度使用額となったためである。研究の実施項目および必要な消耗品は変わらないことから、次年度にこれらの消耗品を早期に使用する予定であり、今年度経費の一部を次年度使用として計上を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度(平成28年度)に未使用となった経費は全てが実験に伴う消耗品費用であり、研究が進捗していることから次年度の早期に使用を行う予定である。なお、これらの消耗品費用は、実験時のディーゼル機関運転による消耗品費が大部分であり、研究の進捗と共に使用し、研究を実施・推進・完了する予定である。
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