舶用プロペラの後流中に置かれる舵は、プロペラが作り出す旋回流から推力を得ることが知られており、プロペラ-舵系の流体力学的干渉を積極的に利用した省エネ舵がこれまでにもいくつか開発、実用化されている。本研究は、プロペラ中心線の延長線上に位置する舵前縁部に切り欠きを与えることで、大きな舵推力を得るという、研究代表者らが開発した新形式の省エネ舵(以下、高推力舵)について、理論的、及び実験的にその効果を確認するものである。 最終年度は、前年度に開発したプロペラ-舵干渉シミュレーションツールを用いて、高推力舵3種類、及び基準となる舵(以下、基準舵)の計4種類の模型舵を設計、製作し、九州大学高速回流水槽にて模型実験を実施した。なお、本実験用プロペラとして、プロペラ-舵の干渉実験に関する過去の論文で多用されている模型プロペラ1個も製作した。さらに、本研究では回流水槽を用いたプロペラ-舵干渉の実験方法を構築すべく、試験法の改良にも取り組み、プロペラオーブンボートの制波板、舵のシャフト(舵軸)カバーも製作し、計測値として舵抵抗成分のみが計測できるに至った。 実験を行った結果、製作したすべての高推力舵について、基準舵に比べ、舵抵抗の減少、即ち、舵推力の増加が見られ、設計点付近の荷重度については、定性的のみならず、定量的にも計算値と同様の結果が得られた。また、プロペラ推力に舵抵抗の変化を考慮した、プロペラ-舵系の推進器効率についても、高推力舵を用いることで向上することを確認した。 前年度(初年度)に実施した理論的研究(シミュレーションツールの開発、及び舵設計)、及び最終年度に実施した実験的研究により、高推力舵による高効率のメカニズムが解明され、実用化に向けた基礎資料が得られた。また、回流水槽によるプロペラ-舵の干渉実験法も構築された。
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