研究課題
本研究で用いるマイクロ波散乱計の信号光強度をより正確に定量的に評価するため、現実的な密度揺動による散乱光分布を計算する3次元全波計算コードを開発した。さらに、米国オークリッジ国立研究所において開発された軸対称プラズマにおけるRF(高周波)用2次元全波計算コードAORSAをTST-2の低域混成(LH)波立ち上げプラズマに適用した。予測されたLH波の3次元密度揺動分布をもとに、開発した全波計算コードを用いてマイクロ波の散乱光分布を評価した。その結果、当初の計画のように入射位置付近で散乱光を受信する(後方散乱計)よりも、プラズマ下部で受信した方が強い散乱光が得られることがわかったので、散乱計の再設計を行った。新設計では、マイクロ波プローブ光の入射角を放電毎に変え、散乱光をプラズマ下部に並べたホーンアンテナアレーで受信するように変更した。マイクロ波の周波数については、当初の設計通り掃引し、広い帯域で計測を行う。マイクロ波の入射角、散乱角、波数を掃引した計測を行うことにより、プラズマ内部の様々な波長・波数方向を持ったLH波が検出可能である。これは、限られたプラズマの分布計測精度では、波動の正確な軌跡は予測困難であることを考えると特に重要である。新設計では、ある程度の範囲のプラズマパラメータについて、プラズマ中心部のLH波を広範囲で計測できることを、光線追跡コードGENRAYを用いて確認した。現在細かい設計が概ね確定し、部品を発注、組み立て中である。
3: やや遅れている
装置製作に先立って、より現実的な3次元数値計算を行ったところ、当初考えていた計測器の設計を大幅に改善可能であることがわかった。装置の再設計を行ったこと、また、それにより必要な予算が増加し、初年度(2015年度)の予算では全ての部品の購入・制作ができなかったことで、未だ計測は開始していない。受信アンテナアレー、伝送路の設計が完了し、2015年度予算内で可能な限り部品を購入・制作した。真空のフィードスルーが設計中であり、現在試作品を試験中である。
2016年度の予算で初期計測に必要な残りのマイクロ波部品は購入済みである。現在製作中の真空のフィードスルーが完成し次第、計測器を本体に設置し、波動計測を開始する予定である。2016年度は、計測器の改良を行いつつ、他のバンドのシステムの設計も行っていく。また、計測された波動の空間構造を2015年度に開発した全波計算コードを用いて定量的に解析する。2015年度には、トムソン散乱計によりプラズマ内部の電子密度・温度分布も新たに計測可能となっており、より精密な定量解析ができる環境が整っている。
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