研究課題
核融合炉の実現において、核融合燃料でありかつ放射性物質であるトリチウムの炉内保持量の正確な把握と制御は、経済性および安全性の観点から必要不可欠である。核融合装置のプラズマ対向壁材料としては、水素同位体との化学反応が無く、高い融点を持つタングステンの使用が検討されており、タングステンと水素同位体の相互作用は非常に重要な研究課題として位置づけられている。通常の環境ではトリチウム保持量が少ないタングステンであるが、核融合反応により生成された中性子や高エネルギーイオンに曝されると、材料内部に照射欠陥が形成され、この欠陥に多量のトリチウムが捕獲・保持されてしまう可能性がある。そこで本研究では、既存の中性子照射タングステン試料に対して、管理区域内で稼働できる昇温脱離ガス分析装置付き小型プラズマ照射装置(東北大学所有)を用いることで、大気開放することなく水素同位体の吸蔵・放出特性に対する中性子照射効果について明らかにすることを目的とする。本年度では、実際の核融合環境下に近い高温における拡散効果依存性について明らかにするため、プラズマ曝露温度500 ℃で中性子照射材料を用いた実験を実施した。実験の結果、異なるプラズマ曝露温度条件であっても、重水素総保持量はプラズマ照射時間の平方根に比例して増加することが分かった。この結果は、Wampler およびDoerner らが示した損傷材料中の水素同位体拡散モデル[W.R. Wampler and R.P. Doerner, Nucl. Fusion 49 (2009) 115023.]とよい一致を示しており、本実験によって初めて実験的に明らかにしたことは大きな成果である。
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