研究課題/領域番号 |
15K18317
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
遠藤 知弘 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50377876)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 未臨界度測定 / 原子炉雑音 / ブートストラップ法 / TRUST Eu:LiCAF / ベイズ理論 / データ同化 / 面積比法 |
研究実績の概要 |
本研究では、東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した溶融燃料デブリ取出時における未臨界度監視として、ガンマ線と中性子線が混在する場で適用可能な未臨界度リアルタイム測定手法を開発することを目的とする。 H27年度の研究成果として、核燃料中に含まれる内在中性子源(例:自発核分裂、(α,n)反応)を活用したパッシブな測定手法の改良として、原子炉雑音に基づいた未臨界度測定手法(Feynman-α法、三次中性子相関法)に対するブートストラップ法の適用を試みた。これにより、任意の測定時間で得られた未臨界度測定結果に対して、統計的な測定誤差を評価することが可能となった。 また、中性子線/ガンマ線弁別性能に優れたTRUST Eu:LiCAF(透明樹脂中に小片Eu:LicCaF6を分散させた材料)の未臨界度測定への適用可能性に関する検討として、波長シフトファイバの周りをTRUST LiCAFでキリタンポ状に包んだ検出器を試作し、Cf中性子源および名古屋大学コバルト60照射施設を利用した検出器性能の予備実験を実施した。 未臨界度測定手法に対するベイズ理論の応用として、H27年度は京都大学原子炉実験所(KUCA)を用いた未臨界度測定実験が実施できなかったため、過去にKUCAで取得した面積比法の実験結果を活用し、まずは面積比法に対するデータ同化手法の適用可能性について検討を行った。併せて、面積比法で直接測定可能な量(面積比)について、(検出された核分裂起因の中性子)/(検出された全中性子)の比で定義される"検出中性子増倍率"を用いて理論的に表現できることを解明し、検出中性子増倍率と実効増倍率の値が等しくなる位置に検出器を配置することで、数値計算による補正の影響が小さいロバストな測定が可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H27年度はTRUST Eu:LiCAF検出器を試作し、名古屋大学内の施設を用いることで中性子線/ガンマ線弁別性能に関する予備実験を実施することができた。しかし、KUCAにおいて未臨界状態の炉心を構築し、試作した検出器を用いた原子炉雑音測定実験を実施する予定であったが、試験研究用原子炉の新規制基準対応のためH27年度内にKUCAの運転を再開することができず、当初予定していた実験を実施することができなかった。そこで、過去にKUCAで取得した測定データを活用することで、原子炉雑音測定手法の改良、および面積比法による未臨界度測定に対するベイズ理論の応用について検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度に引き続き、試作したTRUST Eu:LiCAF検出器の性能確認実験として、原子炉雑音測定に向けた中性子検出時刻情報の収集、データ解析を実施する。H28年度もKUCAにおいて原子炉雑音実験を計画しているが、KUCAにおける実験が不可能だった場合には、名古屋大学内で実施可能な原子炉雑音実験の代替案として、Cf自発核分裂中性子源に起因した中性子相関法実験の実施を計画している。 また、未臨界度測定に対するベイズ理論の応用については、H27年度の研究を通じて面積比法に対して適用可能な見通しを得たため、実時間での未臨界度監視に適した手法である逆動特性解析手法に対する適用可能性について、まずは理論および数値解析を中心とした検討を実施する。H28年度内にKUCAにおける実験が可能となった場合には、原子炉雑音測定実験と併せて、逆動特性解析法による未臨界度測定実験も併せて実施することを計画している。
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