本研究の目標は事故耐性燃料(ATF)のマクロなふるまいの予測(課題1)と、基本的物理現象のモデルで構成された機構論的解析法を用いた溶融燃料物挙動の計算機実験(課題2)により、ATF導入のための要求や課題を明らかにすることである。 課題1の達成のため、平成29年度は前年度(平成28年度)までに高度化した軽水炉燃料ふるまい解析コードFEMAXI-7を用いて、照射試験炉でATFのような新型燃料を照射するための照射マトリックスの新たな考え方を検討した。その結果、従来の経験則に基づく照射プランの作成が困難なため、FEMAXI-7による燃料ふるまい解析(査読付国際会議Proceedingsで発表)により得られる燃料温度やFPガス放出挙動に着目し、照射マトリックスプランを作成するための新たな考え方(燃料-被覆管ギャップ相互作用及び被覆管の照射変形モデルに着目した考え方)を示すことに成功した。 課題(2)の達成のため、事故時溶融燃料の原子炉格納容器(PCV)床面における広がり挙動、さらに床面のコンクリートとの反応(MCCI)による床面の浸食を機構論的に予測するための課題を明らかにした。これらの課題に共通する、溶融物とクラストの固液相互作用をMPS法により機構論的にモデル化するため、従来のMPS法にあった数値的クリープ現象を伴わない、新たなクラストモデルや、新たなMPS法アルゴリズムの提案に成功した。改良MPS法による解析により、溶融物広がり挙動の停止機構(溶融物の伝熱に伴う固相率の増大により生成されるクラスト固着現象)や、MCCIによるコンクリートの非等方浸食機構(固液界面のクラスト安定性の違いがもたらす界面浸食現象の違いを示すことに成功し、それぞれ、査読付学術論文誌にて発表した。
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