研究課題
本研究は、酸化物イオンと過酸化物イオンの間の電気化学的酸化還元反応を利用した二次電池のための新規正極材料の開発を目的とする。これまでに酸化リチウムの四面体カチオンサイトにコバルト、鉄、銅など後期3d遷移金属を置換した物質を正極材料として本方式の電池を実証してきた。なかでもコバルトをドープした酸化リチウムが表面処理により可逆充放電容量が大きく増大することを見出した。その正極材料に対し、充放電過程での構造、状態変化の詳細な追跡を実施し、反応機構に関する知見を得た。1.新規正極材料の開発:前年度までに本方式の電池の正極材料として充放電反応を実証してきたコバルト、鉄をドープした酸化リチウムだけでなく、銅をドープした酸化リチウムも本方式の電池の正極材料として機能することを見出した。その正極材料の充放電過程における構造、化学状態の変化について、X線回折測定、X線吸収分光分析、過酸化物の定量分析により詳細に分析し、酸化物イオンと過酸化物イオンの間の酸化還元反応で充放電が進行していることを明らかにした。2.正極材料の性能向上:コバルトをドープした酸化リチウムを正極材料とした場合、炭酸ビニレンに浸漬する表面処理により可逆な充放電容量が増大することを見出した。炭酸ビニレンで処理したコバルトドープ酸化リチウム正極は400 mAh/gの容量で50回の充放電が可能であった。3.正極材料の反応追跡:性能向上を実現したコバルトドープ酸化リチウム正極材料の充放電過程における状態変化について詳細に分析した。X線吸収分光法によりコバルトの酸化状態や配位環境、酸素の化学状態の変化を追跡することができた。また充放電過程でのオペランドX線回折測定により、回折パターンの微小な変化から反応中の相変化を捉えることができ、反応機構に関する新たな知見を得た。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件)
Journal of The Electrochemical Society
巻: 164 ページ: A750-A753
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10.1016/j.jpowsour.2016.11.050