本研究は、報酬による条件付け学習において、条件刺激と非条件刺激が連合する神経・シナプス基盤を解明することを目的とする。マウス脳スライスにおいて側坐核の単一スパイン・シナプスはシナプス活動のすぐ後(0.3-2秒)に与えられたドーパミンにより強化される。これは報酬学習のシナプス可塑性基盤と考えられるが、実際にどのような学習条件においてこの側坐核のドーパミン時間枠依存的な可塑性が中心的な役割を担うのかは明らかでない。 そこで、側坐核のドーパミン時間枠依存的な可塑性が重要となるマウス行動実験系を開発し、シナプス特性と学習特性の対応をとることを本研究では目指す。まず、マウス頭部固定下に音によるCSと報酬(US)を連合する実験系を構築し、シナプス可塑性の時間枠と類似したのCS-USの時間枠で学習が1時間のうちに成立する条件を見出した。この学習は少なくとも翌日までは保持されて、ドーパミン1型受容体に依存的であった。さらに側坐核の可塑性をウィルスベクターを用いてCaMKII阻害ペプチドを導入すると学習が阻害された。このことから側坐核の可塑性が学習の成立に関与する可能性が示された。さらに実際に側坐核へのシナプス入力が可塑性を生じているのかをしらべるために、光遺伝学により側坐核へのシナプス入力を光刺激により活性化し、この刺激をCSとして条件づけを行う実験系の構築に成功した。この光刺激をCSとした条件づけでもシナプスの時間枠と同程度の連合の時間枠が観察された。これらのことから、側坐核のシナプス可塑性の時間特性が報酬による条件づけの時間枠を決めていると考えられた。以上内容を論文として投稿準備中である。
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