研究課題
水槽冷却装置の導入により、人為的に水温を調節することでヨシノボリの繁殖期を制御できることがわかった。これにより、繁殖期以外のシーズンに河川で捕獲した個体や実験水槽内で孵化から飼育した個体を用いてお見合い実験を行うことができるようになった。ヨシノボリの雄が視覚情報に基づいて雌の種を識別していることを明らかにした。ヨシノボリ雄の視覚特性を調べた結果、赤色光下での視覚能力は低いが、他の波長下では問題なく雌を識別できた。また、識別のポイントとなる鍵刺激を同定するため、種間での違いが顕著な胸鰭基部の模様を入れ墨で塗りつぶした雌を作出したが、雄は問題なく雌を識別できた。このことから、一箇所の体表模様の違いではなく、全身の形態や動きなどで雄は雌を識別していると考えられた。Nissl染色および神経関連因子の分布パターンを用いてヨシノボリ終脳のアトラス作成を進め、他の魚種に見られないハゼ科魚類の特徴を二点発見した。1) 終脳背側野外側部(Dl)が非常に複雑化しており、7つの領域に分別できた。中でもDl6にはSubstance-P陽性線維が豊富に入力するなど、領域ごとに異なるマーカー特性を示した。2) 終脳腹側野背側部(Vd)に由来する細胞集団が終脳背側野に食い込み、巨大な神経核を構築していた。この細胞集団にはGAD65陽性、Substance-P陽性、Enkephalin陽性の細胞が含まれており、哺乳類の線条体に相当すると考えられた。ただし、Substance-P陽性繊維は脚内核(哺乳類の淡蒼球内節)にはあまり入力しておらず、魚類と哺乳類では線条体神経回路に相違のあることが示唆された。また、この線条体様神経核の腹外側には、終脳背側野後部(Dp)と背側部(Dd)に由来するvGluT2a陽性の細胞群が配置しており、他の魚種に見られない機能的単位をなしていると考えられた。
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Dev. Growth Differ.
巻: 59 ページ: 270-285
10.1111/dgd.12364.