生殖的隔離の神経基盤を解明する目的で、ハゼ目小型魚類のヨシノボリに注目した。ヨシノボリの雄は、視覚情報だけで雌の種を識別し、求愛と威嚇の行動を正しく選択できた。神経活動マーカーであるc-fosの発現を指標に、行動に伴い活動した脳領域を観察した結果、求愛では終脳腹側野腹側部や視索前域が、威嚇では下垂体中葉が特異的に活動しており、脳の出力となる領域での活動の違いが確認された。ヨシノボリの終脳には、視覚中枢の構造として知られる終脳背側野外側部の複雑化や、他の魚種に見られない線条体様の構造が見いだされた。今後、これらの脳領域が、識別に伴う行動選択の中枢として機能しているか、解析を進めていく予定である。
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