研究課題/領域番号 |
15K18345
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武藤 亜矢 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), その他(招聘研究員) (00631045)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
サーカディアンリズムとは生物が刻む約24時間の周期を指し、体温やホルモンなどを変化させている。その中で時計遺伝子は約24時間のリズムを刻む遺伝子であり、生体リズムの測定の指標として有用なのではないかと考えられる。精神疾患の一つであるうつ病はこのサーカディアンリズムが乱れているとの報告があり、本研究ではうつ病モデル動物とヒトのサンプルを用い、うつ病の診断バイオマーカーとしての時計遺伝子の有用性を検討することを目的とする。 本研究では、以下の2つの実験について進めた。①非侵襲性のヒトの時計遺伝子測定方法の確立②マウスを用いた末梢と中枢の時計遺伝子の変化 ①については、被験者の時計遺伝子を測定したところ、時計遺伝子のリズムについては測定できた。そのリズムが通常の生活リズムにおいてほぼ一定に保たれているか検討を行うため、被験者から別日にサンプルを採取し測定したところ、同じようなリズム変化が見られた。今後、これまでに報告のあった他の時計遺伝子測定方法で測定したリズムの変動と比較し検討していく必要がある。②については、うつ病モデルとしてコルチコステロン慢性投与モデルを使用し、時計遺伝子の変化についての実験を行った。その結果、うつ病様行動の一つであるショ糖指向性試験ではショ糖の嗜好性は有意に低下したものの、海馬の時計遺伝子には変化が見られなかった。また同様にうつ病モデルとしての慢性ストレスモデルにおいても海馬の時計遺伝子について変化が見られなかった。このことから、うつ病モデルについてはコルチコステロン投与モデル及び慢性ストレスモデルでは時計遺伝子によるうつ病様行動への変化ではないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト時計遺伝子のリズムが再確認できた事は、当初の予定に沿った研究として課題を進められている事と考えている。ただし、動物試験においてうつ様行動をもつモデルでも時計遺伝子の変化が確認できなかった。この点については今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
時計遺伝子のリズムを確認できるヒトの検体を用いて、時計遺伝子測定を行っていく。またマウスを用いて、どのような環境要因が時計遺伝子の変化に影響を与えやすいのか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトの時計遺伝子測定においては安定性の確認のため、条件検討が必要となった。 動物試験においては従来の仮説とは違った結果を得たため、さらなる検討が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
動物試験においては条件を変更し、時計遺伝子の変化とうつ様行動をもつうつモデルとの関係性をより検討していく。
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