ヒトはサーカディアンリズムを持つことが分かっており、その中で時計遺伝子は約24時間の周期をもち、生体リズムに相関している遺伝子である。これらの生体リズムの乱れは、精神疾患のうつ病発症の要因の一つではないかと考えられており、本研究ではうつ病モデル動物とヒトのサンプルを用い、うつ病の診断バイオマーカーとしての時計遺伝子の有用性を検討することを目的とした。本研究では、以下の2つの実験について進めた。①非侵襲性のヒトの時計遺伝子測定方法の確立②マウスを用いた末梢と中枢の時計遺伝子の変化について検討を行った。 ①については、数名の被験者の時計遺伝子を測定したところ、時計遺伝子のリズムについて測定できない被験者が一定数存在したため、サンプルの保存や収集方法の見直しや溶液の濃度の調整などの条件について検討しなおした。しかしながら、いずれも根本的な解決には至っておらず、今後の検討課題としたい。②については、抗うつ効果が報告されている食品成分のひとつであるテアニンを用いて、時計遺伝子への影響について調べた。その結果、海馬の時計遺伝子には変化が見られなかった。このことから時計遺伝子に影響を与える因子として、ストレスホルモンであるコルチコステロンや抗うつに寄与するとされる食品成分テアニンなどの内部経由の環境因子よりも、光などの外部からの環境因子がより大きく影響することが明らかとなった。
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