研究課題/領域番号 |
15K18346
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
緑川 光春 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (60632643)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 開口放出 / 全反射蛍光顕微鏡 / イメージング / シナプス小胞 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ラットやマウスの脳幹聴覚系カリックス型シナプスを主たる標本とし、シナプス小胞の開口放出およびその前段階における動態を、可視化によって明らかにすることを目的として遂行している。シナプス小胞をFM色素によって蛍光標識し、細胞膜直下のシナプス小胞のみを全反射蛍光顕微鏡を用いて可視化した。 軸索終末部が大きく、イメージングの適用が容易なカリックス型シナプスを標本として実験を行った。シナプス小胞をFM色素によって蛍光標識し、細胞膜直下のシナプス小胞の動態を全反射蛍光顕微鏡によって観察することに成功した。シナプス前終末である軸索終末部において、シナプス小胞は伝達物質放出部位への動員(ドッキング)、伝達物質放出への分子的準備(プライミング)を経て開口放出に至る。全反射蛍光顕微鏡検鏡下では、開口放出は刺激に伴う蛍光の瞬時の消失として、ドッキングは輝点の出現として観察された。ドッキングが刺激に対してどのような時間経過で生じるのか、また、ドッキングされたもののうちどの程度のものが実際に開口放出可能な状態に準備されている(プライミングされている)のかについて、電気生理学的手法を組み合わせながら全反射蛍光顕微鏡を用いた高速、高解像度のイメージングを主な手段として測定した。実験の結果、輝点の消失として観察された開口放出は刺激中に集中して生じること、ドッキングされたシナプス小胞のうち一部のみがプライミングされており、開口放出可能な状態になっていることが分かった。また、即時放出可能なシナプス小胞が枯渇した後の比較的早い段階での再充填は、すでにドッキングされていたシナプス小胞がプライミングされることによってなされていることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では研究計画初年度の今年度においてはカリックス型シナプスのシナプス小胞をFM色素で蛍光標識し、1)単一のシナプス小胞を全反射蛍光顕微鏡によって解像すること、2)その単一シナプス小胞の開口放出を可視化すること、の2点を目標としていた。しかし、実験の進展が予想よりも早く進んだため、当初2年目の研究計画として考えていたドッキングやプライミングの時間経過を調べる実験も行ってその結果を得ることができ、成果を学会発表、論文として発信することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
カリックス型シナプスにおける開口放出とその直前におけるシナプス小胞の動態を明らかにすることができたので、今後はより長い時間窓においてシナプス小胞がどのようにドッキング、プライミングされているのか、また、ドッキングからプライミングを経て開口放出されるまでにはどの程度の時間がかかるのかを調べる。また、Neher研究室(マックスプランク生物物理化学研究所)とBrose研究室(マックスプランク実験医学研究所)との共同研究によって、カリックス型シナプスにおいて開口放出された小胞タンパク質が細胞内に回収される過程の可視化に成功しつつあるので、そちらの動態についても調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では初年度にCMOSカメラを購入する予定であったが、次年度にほぼ同価格のまま性能を向上させた新型機種が出るとの業者からの連絡を受け、当初の購入計画を一年延期させることにしたため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
初年度に購入予定であったCMOSカメラを購入する予定である。
|