研究実績の概要 |
睡眠時や麻酔下の大脳皮質から記録した脳波では徐波振動が観察され、個々の錐体細胞と同期して脱分極 (Up) 相と過分極 (Down) 相を繰り返している。さらにそのUp 相の中にはガンマやスピンドルという振動が含まれる。ガンマ波の発生には皮質の抑制性細胞が主要な役割を果たし、スピンドル波は視床網様核がそのリズム生成に重要であると知られている。しかし、その詳細な生成メカニズムや神経活動との関係性は未だ良くわかっていない。本研究では、サブタイプや層を同定した大脳皮質神経細胞の発火活動とスピンドル波・ガンマ波と相関を調べ、これらのリズムの生成機構や皮質内での機能解明への貢献を目指す。 今年度は、ラットの大脳皮質から取得した皮質下の投射先が異なる2 種類の錐体細胞と非錐体細胞(GABA 細胞)の電気生理データから、スピンドル波・ガンマ波と皮質細胞との発火カップリングの強さ・発火位相について解析を行っている。視床から皮質への入力密度は皮質サブレイヤーに依存するため、皮質細胞のサブレイヤー(主にⅡ/Ⅲb, Va, Vb)を組織学的に同定し、視床由来とされるスピンドル波と各皮質サブレイヤーでの発火特性の間の関係を検証している。また、錐体細胞の投射先に依存してスピンドル波・ガンマ波中との発火カップリングの強さ・発火位相が異なるかどうか、調べている。抑制性細胞については、物質発現についても比較した。染色状態が良好で形態の解析が可能な細胞については、その形態をNeurolucidaで再構成し形態学的解析を行っている。
|