研究課題/領域番号 |
15K18351
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
石川 理子 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 助教 (60547991)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚野 / 同期発火 / 生後発達 / 可塑性 |
研究実績の概要 |
大脳皮質一次視覚野の神経細胞は、ランダムに結合するのではなく、特定のルールに従って結合する微小神経回路網を形成している。この微小神経回路網内では、シナプス結合のある2/3層錐体細胞ペアは、その周辺の興奮性細胞からの入力を高い頻度で共有する。私は、この微小神経回路網が、生後の多様な視覚環境からの入力に依存して形成されることを見出しており、視覚情報処理において何らかの役割を果たすと考えている。
本研究は、この微小神経回路網の機能的役割の解明を目的とする。まず、生後の視覚環境を操作することにより、微小神経回路網が形成及び欠損しているラットを用い、複数の神経細胞の活動同期性を調べた。麻酔したラット一次視覚野の複数の神経細胞活動を多チャネル電極によりに計測したところ、以下の結果が得られた。1)微小神経回路網を含む一次視覚野では、類似した視覚反応性をもつ細胞間で同期発火が生じた。2)開眼直後のラットにおいては、視覚刺激による同期発火そのものが観察されなかった。3)生後の視覚経験を操作することにより微小神経回路網が欠損した一次視覚野では、類似した視覚反応性をもつ細胞間での同期発火が観察されなかった。さらに、微小神経回路網の欠損し、一次視覚野において同期発火が生じないラットの視覚機能を水迷路を用いた行動実験により検証したところ、著しい視力低下が観察された。これらの結果は、微小神経回路網が類似した視覚反応をもつ細胞間の同期発火の神経回路基盤であること、さらに、視覚情報処理において重要な役割を果たす事を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小神経回路網が、類似した視覚反応性をもつ神経細胞間の同期発火の神経基盤となることを明らかにした。現在は、微小神経回路網が同期発火の基盤であるかを直接的に検討するために、個々の神経細胞間のシナプス結合の有無と、視覚反応性の類似度、視覚刺激に対する活動同期性の関係を同一細胞間で行うことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
一次視覚野における同期発火が、情報伝達において果たす役割を明らかにすることを目指す。すでに、一次視覚野内で同期発火が減弱したラット2次視覚野において、視覚反応性そのものが減弱することを見出している。この結果は、領野間の情報伝達において、同期発火が重要な役割を果たすことを示唆する。この点を明らかにするために、同一領野に投射する神経細胞が微小神経回路網を形成していること、それらが同期発火していることを直接的に検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度後半に動物実験室において、感染事故が生じ、実験の遂行が困難となったために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初に予定していた実験計画を遂行する。
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