研究課題
大脳皮質一次視覚野において、シナプス結合のある2/3層錐体細胞ペアは、その周辺の興奮性細胞からの入力を高い頻度で共有する。私は、この微小神経回路網が生後の多様な視覚環境からの入力に依存して形成されることを見出している。本研究は、この微小神経回路網の視覚応報処理における機能的役割の解明を目的とした。まず微小神経回路網の有無が神経活動パタンに及ぼす影響を明らかにするために、生後の視覚環境を操作し微小神経回路網が存在するラット及び欠損しているラット一次視覚野神経細胞の神経活動パタンの特性を比較した。複数の神経細胞の活動を多チャンネル電極により計測し、神経活動同期性を定量的に解析し以下の結果を得た。1)微小神経回路網が存在する一次視覚野では、類似した視覚反応性をもつ細胞間で同期発火が生じた。2)微小神経回路網が存在しない開眼直後のラットでは、視覚刺激による同期発火が観察されなかった。3)生後の視覚環境操作により微小神経回路網が存在しない一次視覚野では、類似した視覚反応性をもつ神経細胞間において同期発火が観察されなかった。また、一次視覚野で同期発火が生じないラット二次視覚野では視覚反応性そのものが著しく低下した。さらに、これらの微小神経回路網の欠損したラットの視覚機能を水迷路による行動実験により解析したところ、視覚行動の獲得が困難であることが示された。これらの結果は、微小神経回路網が類似した視覚反応をもつ細胞間の同期発火の神経回路基盤であること、さらに、同期発火の低下がより視知覚行動レベルにおいても重要な役割を果たす事を示唆する。
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Diabetes
巻: 66 ページ: 2372-2386
10.2337/db16-1344. Epub 2017 Jul 3.