研究課題/領域番号 |
15K18352
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
塩崎 博史 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (50630571)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚 / ショウジョウバエ / 意思決定 / 神経回路 / 行動遺伝学 / 短期記憶 / 昆虫 |
研究実績の概要 |
本研究では、豊富な遺伝学的手法が利用可能なショウジョウバエを用いて、感覚情報を統合して次の行動を選択する際に働く神経回路の動作とそのメカニズムの解明を目指す。 本年度は、行動遺伝学実験を行い、感覚情報の統合と行動選択に関わるニューロン集団を同定した。中心複合体の入力ニューロンの一種であるリングニューロンに着目し、遺伝学的手法を用いてカリウムチャネルを過剰に合成させることで、活動電位の発生を阻害した。リングニューロンの活動を阻害したハエの行動と阻害しないハエの行動とを比較したところ、視覚物体に対する定位行動、および視覚情報を時間的に統合して飛行方向を選択する行動に違いがみられた。これらの結果は、リングニューロンが感覚情報の統合に基づく行動選択に因果的に寄与していることを示している。また、ごく一部のリングニューロンのみの活動を阻害したハエの行動を解析し、どのリングニューロンが行動に寄与しているかを検討したところ、視覚物体に対する定位行動、視覚情報を時間的に統合して飛行方向を選択する行動のどちらも、複数のリングニューロンによって担われていることが明らかとなった。この結果は、リングニューロンの樹状突起部において、行動課題に関連する情報が複数のニューロンによって符号化されているという生理実験データと合致する。以上の結果により、ショウジョウバエにおける感覚運動変換の神経機構の一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、行動遺伝学実験を行い、情報統合と行動選択に関わるニューロン集団を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡下で飛行する動物からニューロン活動を記録し、これまでに同定した情報統合と行動選択に関わるニューロン集団がどのような情報を符号化しているかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動遺伝学実験の実行に時間がかかり、当初予定していた生理実験を行うことができず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生理実験に必要な備品・消耗品の購入および成果発表のための旅費の支出を予定している。
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