研究課題/領域番号 |
15K18360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 慎二 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60548494)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シナプス / in vivoイメージング |
研究実績の概要 |
大脳皮質の錐体細胞は他の大脳皮質錐体細胞や視床の神経細胞から興奮性のシナプス入力を受容する。また、周辺の抑制性神経細胞からは抑制性シナプス入力を受容する。このような多様なシナプス入力を区別してin vivo観察を行い、シナプス動態の違いを明らかにした報告はない。本研究では二光子顕微鏡によるin vivoシナプスイメージングを行い、大脳皮質2/3層の錐体細胞に入力するシナプスを、樹状突起上の空間的配置や分子マーカーをもとに分類し、それぞれのグループが示す特徴的な変化パターンを抽出する。これにより、投射元に依存した多様なシナプス動態パターンを見出し、個別の神経回路の特徴、性質を明らかにすることが目的である。 本研究では興奮性後シナプスの主要な形成部位であるスパインをマーカー分子により分類するとともに、apical dendriteとbasal dendriteのスパインにも注目し、その動態の違いを調べる。Basal dendriteは深部に位置するため、open skull法による観察窓の作製が必要となる。平成27年度に手術手技を検討した結果、長期観察が可能な観察窓作製が可能となったが、その成功率は低かった。平成28年度はさらに手技の検討を行い、ガラスの埋め込み方法を改良する事で、手術の成功率を高めることが可能となった。この方法を用いてマーカー分子であるgephyrinを発現した細胞のin vivoイメージングを行い、空間的配置の異なるスパインを広範囲から取得する事に成功し、シナプス動態解析の基礎データを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するためには、open skull法による安定的な深部観察野確立が必須となるが、平成27年度の段階では手技確立はできたものの成功率が低く、効率的にデータを集めることができなかった。そこで、平成28年度はopen skull法の手技改善に労力を割いたため、シナプス動態解析のためのデータ収集にやや遅れが生じている。しかし、観察野作成の成功率が飛躍的に上昇したため、データ収集の遅れは今後改善すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
データ収集を行っている野生型マウスのシナプス動態解析を進める。シナプスマーカー、空間的配置によって分類したシナプスの動態に違いがないか明らかにするとともに、各シナプス群の相互作用についても解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
観察野作製の改善に注力したため、遺伝子導入の機会が予定より少なかった。また、予定していた学会への参加を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子導入のための試薬やデータ収集のための動物購入費および維持費。また、データ解析のためのソフトウェアおよびデータ保存のための記憶媒体に使用する。
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