本研究は、我々が発見した平面内細胞極性因子Vangl2によるシナプス接着分子Nカドヘリンのエンドサイトーシス制御の分子機構を解明することを目的とした。平成27年度は、Nカドヘリン/Vangl2複合体のエンドサイトーシスを制御する可能性のある新規の結合蛋白質候補をNカドヘリン/Vangl2の免疫沈降により共沈させ、共沈物をnano LC-MS/MSで解析、候補を同定した。平成28年度は、それぞれ同定した蛋白質に対する特異抗体を用いて、共免疫沈降法によりNカドヘリン/Vangl2と複合体を形成するかどうかを解析した。しかし、候補の中にはNカドヘリン/Vangl2と結合するものは見出せなかった。そこで、これらと相互作用する既知の因子あるいは、シグナル伝達経路の中にNカドヘリンのエンドサイトーシスを制御するものがあるかどうかを調べることにした。そのために、これらの遺伝子の発現プラスミド及び、shRNAを構築した。そして、これらをNカドヘリン/Vangl2を発現した293T細胞に導入して、Nカドヘリンの細胞表面に発現する割合を評価して、その因子がNカドヘリンのエンドサイトーシスを制御しうるかどうか解析している。評価法としては細胞表面蛋白質のビオチン化標識を用いている。また、シナプス形成に於いて、Vangl2によるNカドヘリンエンドサイトーシスの制御の役割を遺伝学的に調べている。その過程で、その異常が二分脊椎を引き起こすことが判明した。
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