研究課題/領域番号 |
15K18365
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中川 直 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30707013)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ALS / TDP-43 / 細胞内凝集体形成 / RNA |
研究実績の概要 |
TDP-43タンパク質の細胞質凝集体形成は、筋委縮性側索硬化症(ALS)の発症過程において必須な役割を果たすと考えられているが、その形成機構は不明である。近年この凝集体がストレス顆粒と呼ばれる構造体に形成されることが明らかとなってきたが、TDP-43のストレス顆粒への移行のメカニズムは不明である。ストレス顆粒はRNAを核として形成されること、およびTDP-43はRNA結合タンパク質であることから、本研究では、TDP-43に結合するRNAが細胞質凝集体形成に寄与すると仮定し、検証する。 初めに、TDP-43の細胞質凝集体形成を培養細胞で再現性良く誘導できる実験条件を検討した。すでに種々の細胞刺激によるTDP-43の細胞質凝集体形成の誘導が報告されていたため、それらの条件を検討し、定量化したところ、凝集体形成は毎回確認されたものの、効率においてばらつきが見られた。このばらつきはTDP-43の検出効率が悪いこと、およびTDP-43の発現量のばらつきによるものと推定されたため、Tet-onシステムによるTDP-43の発現量の均一化とタグの付加による検出効率の向上を図り、細胞質凝集体形成を再現性良く誘導できる実験条件の確立に成功した。 次に、TDP-43のRNA結合能と細胞質凝集体形成効率の関係を検討した。TDP-43のRNA結合能を欠失させるため、RNA結合領域のアミノ酸に変異を導入したところ、標的RNAとの結合が約8割減弱することをCLIP-qPCR法により明らかにした。また、RNA結合能を欠失させたTDP-43の細胞質凝集体形成効率は、野生型と比較して約8割減弱していた。 以上の結果から、TDP-43に結合するRNAは、細胞質凝集体形成を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ALS発症機構として考えられているTDP-43の細胞質凝集体形成、およびタンパク質安定化に対するRNAの効果を検討する。平成27年度において、TDP-43と標的RNAとの結合を定量的に検出できるCLIP-qPCR法の確立、RNA結合能を欠失させた変異型TDP-43の作出、およびTDP-43の細胞質凝集体形成を再現性良く誘導できる実験系の確立に成功し、TDP-43に結合するRNAが細胞質凝集体形成を促進することを明らかにすることができた。また、RNA結合能を欠失させた変異型TDP-43は、野生型と比較して、安定性が低下していることも見出している。これらの成果から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度において得られた結果は、すべてヒト骨肉腫由来U2OS細胞を用いて得られたものであるが、ALSにおいて異常が認められるのは運動神経およびグリア細胞であるため、平成28年度においては、平成27年度で行った同様の実験を運動神経由来NSC-34細胞、およびグリア芽腫由来U-87MG細胞で再現する。 ALS患者において同定されているいくつかのTDP-43のアミノ酸変異は、TDP-43の細胞質凝集体形成、および安定性を増加させることが報告されているものの、そのメカニズムは不明である。本研究からTDP-43に結合するRNAが、TDP-43の細胞質凝集体形成および安定性を促進することが明らかとなったため、これらの変異型TDP-43は標的RNAとの結合が増加していると予想される。本研究で確立したCLIP-qPCR法を用いてこれを検討する。 TDP-43に結合するRNAがALSの発症に関わる可能性が示唆されたため、ALSに対する治療法の開発を見据えて、これらのRNAを分解に導く方法の確立を目指す。TDP-43の生理的機能にとってRNAとの結合が必須と考えられているため、TDP-43に結合するすべてのRNAを分解することは、TDP-43の正常な機能を障害すると考えられる。RNAを介したTDP-43の生理的機能は通常核内で遂行されると考えられているため、本研究では細胞質におけるRNAの選択的分解を試みる。具体的には核移行シグナルを欠失させたTDP-43にRNaseを融合させ、細胞質におけるTDP-43の標的RNAの分解を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養方法や遺伝子導入法が確立されており、使用経験が豊富であったヒト骨肉腫由来U2OS細胞で実験条件を確立した後、運動神経由来NSC-34細胞、およびグリア芽腫由来U-87MG細胞で同様の実験を行う予定であったが、U2OS細胞における実験条件の確立に時間を要したため、平成27年度に計上していた予算を次年度に使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
運動神経由来NSC-34細胞、およびグリア芽腫由来U-87MG細胞の購入、ならびにそれらの細胞培養と遺伝子導入に要する試薬の購入に使用する予定である。
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備考 |
がん医学コアセンター細胞増殖制御分野 http://www.devgen.med.tohoku.ac.jp/index.html
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