研究課題/領域番号 |
15K18366
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
木村 妙子 首都大学東京, 理工学研究科, 研究員 (60748820)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タウオパチー / Phos-Tag SDS-PAGE法 / アルツハイマー病 / Tau / Cdk5 / リン酸化 / ADモデルマウス / 患者脳 |
研究実績の概要 |
タウオパチーはTauの凝集体を病理とする一群の神経変性疾患でありアルツハイマー病(AD)、皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺、ピック病などがある。凝集Tauは異常リン酸化されており異常リン酸化を解明することはその毒性及び病理の解明につながると考えられる。 本研究ではリン酸化の組合せと総量を定量可能なPhos-Tag法を用いin vitro、AD モデルマウス、タウオパチー患者脳内におけるTauのリン酸化解析を行った。 培養細胞を用いTauの主要リン酸化酵素であるCdk5によるTauのリン酸化解析を行なった結果、13ヶ所と報告されていたリン酸化部位の主要部位が3箇所であることが分かった。次にリン酸化Tauバンドを同定しデーターベースを作る為にCdk5リン酸化部位の非リン酸化型変異体とリン酸化抗体を組み合わせる事で主要部位を同定した。更にタウオパチーの一つであるFTDP-17(R406W)型TauはS404A(S404非リン酸化型)とほぼ同じリン酸化パターンを取ることからS404部位のリン酸化消失が確認された。次にADモデルマウスを用いた解析では、JNPL3(P301L型)マウスのサルコシル不溶性画分でTauの高リン酸化が確認されたが、可溶性画分ではWTと同等のリン酸化であった。ヒト脳内では0N3R,0N4R Tauにおいて非リン酸化量が17.9%,14.1%と予想以上に高い事、AD脳内ではBraak stage VIではVに比べてリン酸化程度が高という違いがあるが、サルコシル可溶性画分ではAD(Braak stage V,VI),CBD患者脳内でのリン酸化は健常者と同等である事が分かった。ここからTauの高リン酸化はTauの凝集後に起こるのでないかと考えられる。これらの結果からPhos-tag SDS-PAGE法はTauのリン酸化解析に有用であり今後の解析に期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ADモデルマウス、タウオパチー患者脳を用いたin vivo解析結果は 2016年1月にThe American Journal of Pathology誌に掲載された。またin vitroの解析結果についてもScientific Reports誌に投稿中である。
また2015年9月に第66回電気泳動学会にて「Phos-tag SDS-PAGE法による神経変性疾患タウのリン酸化解析」。同2015年9月に第58回日本神経化学会大会にて「The abundance of nonphosphorylated tau among heterogeneously phosphorylated tau species in vivo in mouse and human tauopathy brains」という題名で招待講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いて作り上げたリン酸化バンドデーターベースを基にし、タウオパチー患者脳内Tauのリン酸化を解析する。疾患によりに発病部位が異なため、前頭葉、側頭葉、中心前回など部位別の解析も行う。リン酸化凝集形成などと関係づけるため、生化学的実験と組織染色も同時に行う。 その後各タウオパチー発症に関連するTauキナーゼを推測し、タウオパチーモデルマウスを使用し、推定されたTauキナーゼの働きを阻害剤やsiRNAにより抑制することでTauのリン酸化および疾患の進行を抑制出来るか解析する。その際AD, CBD, PSP, PiD, FTDP-17のモデルマウスを使用する。
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