研究課題
タウは脳で発現する微小管タンパク質であり、またタウオパチーと呼ばれる一群の神経変性疾患では凝集体を形成し、疾患の原因ではないかと考えられている。タウの微小管結合能(生理的役割)はリン酸化によって制御されている。一方、凝集タウ(病理)は異常リン酸化されている。タウのリン酸化は生理的にも病理的においても重要な問題である。タウのリン酸化についてはこれまで多くの研究が行われてきたが、細胞内でどのようなリン酸化状態で存在するのかは明確になっていなかった。本研究内ではリン酸化部位の組み合わせと定量可能なPhos-Tag SDS-PAGE法を用いて解析を行った。培養細胞に強制発現させたタウは12のリン酸化の異なるアイソタイプとして存在した。主なリン酸化部位はThr181,Ser202,Thr231,Ser235,Ser404であり、それらの組み合わせで12のリン酸化アイソタイプとなっていた。そのリン酸化パターンはマウス脳内のタウと同様であり、培養細胞内での解析がin vivoリン酸化の解明につながると考えられた。前頭側頭葉認知症のR406W変異タウは変異のすぐN末側にあるSer404のリン酸化に影響を与えた。Ser404のリン酸化消失がどのような病理的意義を持つか今後の課題である。タウには微小管結合領域が3つの3リピートタウと、4つの4リピートタウがある。タウオパチーの種類によって凝集するタウのリピートが異なる。タウのアイソフォームによりリン酸化が異なるかについても解析を行った。培養細胞にリピート数の異なるタウを発現させたところ、リピート数によってリン酸化状態に違いが見られた。以上の結果から、タウのアイソフォーム、細胞内に置ける存在状態によりリン酸化が異なると考えられる。今後どのような状態においてタウのリン酸化が亢進し、疾患タウへと変化していくのか明らかにしていきたいと考えている。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 33479
10.1038/srep33479