我々がポリグルタミン凝集体蛋白質(PAIP)として世界に先駆けて同定してきたFUS/TLS、EWS、TAF15、ubiquilin2などが、近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)の責任遺伝子またはタンパク質凝集に関与する因子であることが次々に判明してきている。このことはALS/FTLDとポリグルタミン病にRNA結合タンパク質凝集を介した細胞障害機構や凝集体の処理過程に共通のメカニズムが働いている可能性を示している。本研究は研究代表者らが独自に入手している未発表のPAIPについて、ポリグルタミン病、ALS、FTLDの剖検組織における免疫組織学的検討により、新規ALS病態関連分子を同定し、その封入体の病理学的形態や臨床経過の特徴をとらえるものである。 凝集体プロテオーム解析により、ポリグルタミン凝集体結合タンパク質(PAIP)として我々が独自に同定してきたubiquilin2、matrin3、hnRNP H1/H2、hnRNP F、Matrin3、DDX5、DDX17に対する抗体を用いてポリグルタミン病、ALS病理組織の検索を行う。 ポリグルタミン凝集タンパクのうち、Matrin3に関しては孤発性ALS15例のうち9例で抗Matrin3抗体陽性の細胞質内封入体を認めた。また、Matrin3抗体陽性の細胞質内封入体は抗TDP-43抗体との二重染色でco-localizeしていた。この結果よりTDP-43と相互作用し、孤発性ALSの病態生理に関与している可能性が高いと推測される。この内容に関しては現在論文投稿中である またDDX-17についても孤発性ALSの細胞質で異常に凝集することを確認している。他のポリグルタミン凝集タンパクについては孤発性ALSの病理検体を用いて免疫組織科学的検討をしたが、明らかな異常所見は得られていない。
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