研究課題/領域番号 |
15K18374
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宝田 美佳 金沢大学, 医学系, 助教 (40565412)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アストロサイト / 脱髄 / 多発性硬化症 / Ndrg2 / 炎症 |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄疾患であり、その原因として自己免疫の関与が明らかになってきた。従来の研究では免疫担当細胞の重要性に焦点がおかれていたが、本研究では免疫細胞活性化の次のステップにあたる中枢神経系への浸潤過程に注目する。中枢神経系への入口となる血管をとりまくアストロサイトが、免疫細胞の浸潤過程を規定する、という仮説を検証し、病態のさらなる理解と克服を目指す。具体的には、中枢神経系においてアストロサイト特異的に発現しその活性化に関与する、Ndrg2(N-myc downstream-regulated gene 2)遺伝子の欠損マウスを用いてMSモデルであるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)を作製し解析する。本年度は、脱髄疾患におけるNdrg2KOマウスの表現型解析を行い、組織学的手法を中心として解析した。まず、野生型マウスでMSモデルを作製したところ、急性期にNdrg2の発現が上昇していることを見出した。次にMSモデルをNdrg2KOマウスで解析したところ、野生型と比較してEAEの誘導による麻痺症状が軽減していることを見出した。さらに、髄鞘タンパク質であるMBPの免疫組織染色を行ったところ、EAE誘導による脱髄が、Ndrg2欠損マウスでは軽減していることが明らかとなった。これらの結果から、多発性硬化症の病態形成に、Ndrg2を介してアストロサイトが重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、野生型マウスの組織学的解析から、実験的自己免疫性脳脊髄炎の誘導後早期に、Ndrg2の発現が上昇することを見出した。また、Ndrg2欠損マウスで同モデルを作製した解析から、野生型と比較して急性期の麻痺症状が減弱しており、さらに脱髄レベルも軽減していることを明らかにすることができた。これらから、多発性硬化症の病態におけるNdrg2の重要性を示すことができた。計画していた課題を順調に達成できているため、上記の評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、多発性硬化症モデルにおけるNdrg2を介したシグナル伝達の分子機構を詳細に進める。Ndrg2がいかに脱髄疾患を軽減しているのか、血球細胞の浸潤が減少しているのか、それは全般的か特定の細胞への浸潤調節なのか、そして浸潤に関わるどのケモカインやサイトカインを介した作用であるのか、について解析を行う。まず、病態モデルの解析によりin vivoでの作用ポイント、標的分子の同定を試み、さらに標的分子についてin vitroの系で検証を行う予定である。これにより、脱髄疾患におけるアストロサイトNdrg2による炎症性浸潤の調節メカニズムを明らかとする。
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