研究課題
多発性硬化症(MS)は中枢神経系の自己免疫性脱髄疾患である。活性化した免疫細胞が中枢神経系に浸潤し、脱髄を引き起こすことにより麻痺などの神経症状を呈する。MSにおいて免疫細胞の重要性が明らかとなってきたが、中枢神経系細胞がいかに病態を制御しているかについては不明な点が多い。そこで炎症性細胞浸潤の入口となる、血管をとりまくアストロサイトに注目し、そのストレス応答遺伝子を介した多発性硬化症病態への関与を解析した。具体的には、中枢神経系においてアストロサイト特異的に発現しその活性化に関与する、Ndrg2(N-myc downstream-regulated gene 2)遺伝子の欠損マウスを用いてMSモデルであるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)を作製し解析を行った。MSモデルで急性期から慢性期までを通しNdrg2タンパク質の発現が上昇する結果が得られた。Ndrg2欠損マウスでは、MSモデルにおける麻痺症状の軽減が認められ、特に慢性期において顕著な差を示した。これに付随してアストロサイトに発現するアミノ酸トランスポーターのEAE誘導による発現減少がNdrg2欠損マウスでは軽度であることを見出した。さらにNdrg2欠損マウスでは、EAE誘導による脱髄および神経細胞マーカー減少の軽減、加えて免疫細胞浸潤の軽減が認められた。急性期には、血管内皮細胞において免疫細胞浸潤に関わる分子の発現上昇がNdrg2欠損マウスにおいて軽度であることを認めた。これらの結果より、アストロサイトはNdrg2の発現を介して多発性硬化症の病態の形成に関与することが明らかとなった。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Glia
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.1002/glia.23139.
Journal of Neurochemistry
巻: 139 ページ: 1124-1137
doi: 10.1111/jnc.13714.