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2016 年度 実施状況報告書

社会報酬反応の減退に関与する分子基盤に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K18378
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

千葉 秀一  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 科研費研究員 (00510380)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード社会性行動 / 報酬 / 条件づけ場所嗜好 / 遺伝子発現 / cDNAマイクロアレイ / トランスクリプトーム
研究実績の概要

本研究では、社会交流によって生じる報酬が成長に伴って減少するメカニズムの解明を目指し、自閉症等の社会相互反応や社会性行動に変化が生じる疾患の治療法開発に役立つ知見を見出すことを目的としている。研究期間の初年度であった昨年度では、条件付け場所嗜好による行動学的解析を行い社会報酬への反応が3週齢のラットでは性別に関係なく見られたものの、12週齢ではこの反応が減弱し、ほとんど見られないことを確認した。

本年度では前年の行動解析の際に得られた脳サンプルを用いて、前頭野および腹側線状体において、社会報酬反応が減少する時に発現の変化する遺伝子の同定を試みた。まず脳サンプルから抽出したmRNAを用いて、cDNAマイクロアレイを用いて発現を定量した。次に、GeneSpringソフトウエアを用いて、発現量の比較を行った。BioAnalyzerによる解析や吸光度を用いたmRNA品質の解析は良好であった。次に、社会報酬への反応が強い3週齢と同反応が弱い12週齢のラットの前頭野における遺伝子発現を2ペアで比較したところ、発現量の2倍以上の増加もしくは0.5倍以下への低下が見られた配列が、それぞれ51と134であった。そのうち、アノテーション情報がある配列は16と62であった。一方、3週齢のラットにおいて、社会報酬と食餌報酬は報酬反応がともに見られたが、これらのラットの比較で強い変化を示した配列は4と44であり、上記の3週齢と12週齢を比較したものと比べて少ない傾向が見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の遂行を基本的に一人で行っている研究代表が所属する研究機関を国立精神・神経医療研究センターに変更した。所属機関が変わったことに付随して、新たな研究を開始することになり、そのセットアップや予備的検討に割くエフォートが増加したため、本研究に対するエフォートが想定していたよりも少なくなった。また、現所属期間ではcDNAマイクロアレイ解析装置が設置されていたものの、長期間使用されておらず動作のチェックや軽微な修繕が必要になった。以上の理由により、想定よりも研究の進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

今後は、まずはじめにcDNAマイクロアレイによって得られたデータ解析をさらに進めたい。今回測定したサンプルには、社会報酬による条件づけで得られたサンプルのみならず、嗜好性のある飼料を用いた条件づけで得られたサンプルもあるため、両者の変動を詳細に解析することで共通に変化するものやそれぞれのモダリティーに特有な反応を抽出することが可能になると思われる。主成分分析や階層クラスタリング解析、ヒートマップ解析などを行い、特異な変動を起こすクラスターの同定を行いたい。

また、上記の研究実績で示した遺伝子発現の変化について、さらにサンプル数を増やして遺伝子発現の変化の評価を行いたい。手法としては定量PCR法用い、2つのペアで共通して変化した遺伝子を中心に、社会報酬反応の発生に関わる遺伝子の同定を試みたい。社会報酬反応の調整に関わる遺伝子候補が同定出来た場合は、同遺伝子のノックアウトマウスの行動学的表現型の解析や、翻訳産物に対する阻害剤を用いた行動薬理学的な手法によって、社会報酬反応における役割の解明を目指したい。

次年度使用額が生じた理由

当初の想定よりも研究の進捗が遅れている。定量PCRを用いた遺伝子発現解析を本年度に行う予定であったが、着手にはいたらず、次年度にずれ込むことになった。以上が、次年度使用額が生じた主な理由である。

次年度使用額の使用計画

定量PCRに用いるプライマーやプローブ、プラスチック製チューブ等の消耗品の購入に利用する予定である。

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公開日: 2018-01-16  

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