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2017 年度 実施状況報告書

社会報酬反応の減退に関与する分子基盤に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K18378
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

千葉 秀一  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, その他 (00510380)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード社会性行動 / 報酬 / 遺伝子発現 / mRNA / 学習
研究実績の概要

本研究課題は、ラットにおいて社会交流によって生じる報酬が成長に伴って減少する機序に着目し、社会相互反応が減弱する自閉症やうつ病などの治療にとって有用な知見を獲得することを目的としている。前年度までの行動学的解析では、社会交流によって生じる報酬(本研究課題では社会報酬と呼ぶ)を場所嗜好性試験で調べているが、3週齢のラットでは強い報酬反応が見られるが、12週齢では減弱することを確認している。

本年度は、3週齢と12週齢の2つの週齢のラットを用いて、社会報酬学習課題を課した場合だけでなく、嗜好性のある食物への報酬を用いた学習を課した両週齢のラットの前頭野における遺伝子発現の比較をマイクロアレイ法にて行った。まず、両週齢間で2倍以上の変化を示した配列は社会報酬で205, 食物報酬で179であり、Gene symbol等のアノテーションのある配列はそれぞれ110, 71であった。このうち、社会報酬学習課題と食物報酬学習課題で共通して変化した遺伝子は16あり、これは非特異的な加齢に伴った変化であると考えられた。このような変化を示した遺伝子の例としてHba1, Hba2といったヘモグロビンを構成するタンパクの遺伝子が見出された。社会報酬学習課題群で、両週齢の間に発現の変化が見られた遺伝子は94あったが、独立して行った2つのサンプルで共通して変化した遺伝子が2つあり、今後の詳細な機能解析を行う最有力の候補と考えられた。

Gene Ontology (GO)解析では、社会報酬課題群の幼弱動物と成熟動物の間で、hemoglobin complexや酸素のトランスポートの低下が見出されたが、これは上述のヘモグロビンサブユニットタンパクの発現量の加齢による非特異的な低下と一致している。一方で、Gタンパク共有受容体のシグナリングの増加が認められ、何らかの神経伝達の変化が生じている可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究代表の所属機関異動に伴って、割けるエフォートが減少している。また遺伝子発現を比較する実験群が多く、見出されたターゲットの絞り込みにも時間がかかったため、想定よりも遅れている。

今後の研究の推進方策

本研究課題では、社会報酬と食物報酬を用いた2つの学習課題と、幼若動物と成熟動物の2種類を用いた、合計4条件の間のトランスクリプトームの比較となり、データの多様な見方が可能で解析の難易度がかなり高かったが、昨年度および本年度の解析を通して、ターゲットとなる遺伝子の絞り込みはかなり出来たと思われる。

次年度は、検出されたターゲット候補遺伝子の発現量の変化を定量PCR法で確認する作業を引き続き行う。これと同時に、その遺伝子産物の阻害薬を投与したあとに、社会報酬反応を調べることにより、本年度に見つかったのターゲット候補が実際に社会報酬反応の形成に関与しているかどうか明らかにする予定である。また、研究代表の先行研究では、社会報酬反応を場所嗜好性試験で調べることはマウスでも可能であることを見出していることから、ターゲットの遺伝子発現が欠失したノックアウト動物を購入あるいは遺伝子編集などの技術で作出して解析することも検討する。

次年度使用額が生じた理由

本年度までの研究の遂行が当初に想定していた予定よりも遅れており、研究期間も延長したため、支出も想定より少なく、次年度使用額が発生した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Rotigotine, a dopamine receptor agonist, increased BDNF protein levels in the rat cortex and hippocampus2018

    • 著者名/発表者名
      Naoki Adachi, Aya Yoshimura, ShuichiChiba, ShintaroOgawa, HiroshiKunugi
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 662 ページ: 44-50

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2017.10.006

    • 査読あり
  • [学会発表] The effect of mouse strain and duration of stress exposure on the depression-like behavioral changes by repeated restraint stress2017

    • 著者名/発表者名
      Shuichi Chiba, Shoko Tsuchimine, Aya Yoshimura, Hitomi Suzuki, Kazunori O'Hashi, Kazuhiro Sohya, Hiroshi Kunugi
    • 学会等名
      第40回日本神経科学大会
  • [学会発表] 反復拘束ストレス負荷によるうつ様行動に対するマウス系統とストレス曝露期間の影響2017

    • 著者名/発表者名
      土嶺 章子、千葉 秀一、吉村 文、鈴木 仁美、大橋 一徳、惣谷 和広、功刀 浩
    • 学会等名
      第39回日本生物学的精神医学会・第47回日本精神神経薬理学会(合同年会)
  • [備考] 国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病三部ー業績一覧

    • URL

      https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r3/achievement/index.html

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公開日: 2018-12-17  

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