本研究は、i) 統合失調症関連因子DISC1の新規結合因子DBZ(DISC1-binding Zinc finger protein)が髄鞘形成時期のオリゴデンドロサイト(OLs)に発現していること、ii) DBZはOLsの分化を正に制御する機能をもつこと、という申請者がこれまでに行ってきた検討結果をさらに発展させて、OLs成熟化における詳細なDBZの分子機構を解明することで OLsの機能異常を起源とする統合失調症発症の分子機序の解明へと展開するための基盤形成の確立を目的とする。具体的にはDBZ発現異常によるOLs特異的な網羅的な遺伝子発現変化の検討やOLs特異的なDBZ結合因子の同定、機能解析を行い、DBZの発現異常と統合失調症発症との関連性について検討する。 平成27-28年度はDBZ ノックアウトマウスで変動している遺伝子群について解析するためマイクロアレイ解析によって細胞骨格系の因子を多く含むいくつかの遺伝子を同定すると共に、OLsにおいてDBZと相互作用するタンパク質としてモータータンパク質dyneinの制御因子であるNuclear Distribution E Homolog 1 (NDE1)を同定した。NDE1は髄鞘形成時期の生後2週齢マウス脳梁OLsにおいてDBZ と共発現すると共に相互作用が認められた。 平成29年度はOLs分化時の詳細なNDE1の機能解析を行った。OLsにおけるNDE1発現抑制やdyneinとの結合を阻害するdominant negative体の発現によってOLsの分化・形態形成レベルが低下した。以上のような本研究成果によりDBZ-NDE1-dyneinの複合体が OLs分化に重要な働きをしている可能性が示唆された。
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