研究課題/領域番号 |
15K18389
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苣田 慎一 杏林大学, 医学部, 助教 (90639791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 疾患モデル / メダカ |
研究実績の概要 |
申請者は、食欲中枢で作用するレプチン受容体の欠損(LepRKO)メダカの表現型にアジア人型2型糖尿病様症状、及び異常行動を見出した。前者は脂肪蓄積とインスリン抵抗性を伴わない慢性的高血糖である。後者はヒト不安症状に相当する行動である。両者は代謝量が減少する時期の連続した過食により遅発的に発症することも特徴的であった。メダカはマウスやラットと異なり脂肪を蓄積しにくい生理的特徴を持つ。 本研究では、肥満を伴わない糖尿病の原因解明と、2型糖尿病と不安障害(合併症)を示す新たなモデル生物の確率を目指す。その為には、LepRKOメダカの成長過程における1)血糖値、2)血中インスリン濃度、3)血糖調節組織における遺伝子発現、及び4)行動の追跡定量が必須である。 申請前時点で様々な制限給餌下において、1)の追跡と4)の定量化は達成された。平成27年度には、LepRKOメダカが過食給餌下ではインスリン分泌に関連する遺伝子発現が低下し、インスリン分泌不全を示すが、過食給餌量の半分量では、それらを示さないことが分かった。H28年度は特定の期間の過食(栄養状態)が後の高血糖値を決定づけることを突き止めた。また、H28年度末時点で、pdx1(膵臓で発現する遺伝子)プロモーター下流にGFP遺伝子、かつインスリンプロモーター下流にmCherryを持つLepRKOメダカ(及び比較対象メメダカ)の作成が完了した。 H29年度は、そのメダカを利用し、血糖値異常前後の膵臓の遺伝子発現パターンを解析し、過食(栄養状態)が後の血糖値制御を混乱させるメカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、メダカの生活習慣に関する表現型解析は20週間を1試験としている。H28年度末時点で、LepRKOメダカが糖尿病になるのに必要な飼育条件を1週間レベルで明らかにできた。メダカの膵臓は小さい。H28年度末時点で、目的の遺伝子解析に必要な蛍光標識メダカを作製完了している。したがって、H29年度中に飼育環境により影響を受け、かつ血糖値制御に影響を及ぼす遺伝子の特定が達成できる見込みである。研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度中に飼育環境により影響を受け、かつ血糖値制御に影響を及ぼす遺伝子の特定が達成できる見込みである。より確かなものとするために、膵臓のみでなく、血糖制御に関連する脳、脂肪組織のトランスクリプトーム解析も行う可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額の繰越は、RNA-seq等のトランスクリプトーム解析時期の変更が主な理由である。専門家や経験者との話し合いにより、同解析をする週齢を16週齢(体長3cmほど)から5-8週齢(体長2cm以下)のいずれかとすること、及びその週齢では膵臓の摘出が難しいので蛍光標識メダカを作製すること、などがトランスクリプトーム解析に必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度末までにトランスクリプトーム解析のための必要条件が整ったので、これまでの繰越額をH29年度に使用する。
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